


親と同居していると、実家の土地を相続するときに「小規模宅地等の特例」が使え、相続税を大きく減らせます。
土地の評価額が最大80%減額される仕組みで、同居しているかどうかで納税額が数百万円変わることもあります。
ただし、この優遇を受けるには「同居」と認められる住み方をしている必要があります。住民票を移しただけでは同居にはなりません。
単身赴任や老人ホーム入居、二世帯住宅など、同居と認められるかどうか迷うケースも多くあります。
また、これから親との同居を考えている人にとっては、「本当に税金が減るのか」「いつから住めばいいのか」が気になるところです。
同居は生活そのものが変わる大きな決断です。税金の損得と暮らしの両面から、始める前に確認すべきことがあります。
この記事では、親と同居した場合の相続税の軽減額、同居と認められる住み方・認められない住み方、同居を始める前の注意点までを整理します。
▼ この記事の3行まとめ

親との同居が相続税に効くのは、小規模宅地等の特例があるからです。同居していた子が実家を相続すると、土地の評価額が80%減額されます。
ここでは特例の仕組み、対象の範囲、誰が相続するかによる要件の違いを解説します。
小規模宅地等の特例は、亡くなった人の自宅の土地を一定の親族が相続した場合に、評価額を大きく減額できる制度です。
同居していた親族が相続すれば、土地の評価額は80%減額されます。5,000万円の土地なら、1,000万円として相続税を計算できます。
残された家族が自宅を手放さなくて済むように、という趣旨の制度です。だからこそ「実際にそこで暮らしていたか」が厳しく問われます。
減額されるのはあくまで土地の評価です。建物や預貯金には適用されないため、「実家の土地が財産の中心」という家庭ほど効果が大きくなります。
計算ロジック:【例】評価額5,000万円の自宅の土地なら、5,000万円×(1−80%)=1,000万円まで評価が下がります。減額効果は4,000万円です。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
80%減額の対象になるのは、亡くなった人が住んでいた自宅の土地(特定居住用宅地等)で、330㎡までの部分です。
330㎡は約100坪にあたり、一般的な住宅ならほとんどのケースで敷地全体が対象に収まります。
330㎡を超える広い土地の場合は、超えた部分だけが通常の評価になります。減額の対象は土地であり、建物には適用されません。
なお、建物は固定資産税評価額で評価され、もともと時価よりかなり低めです。実家の相続では、土地の評価をどれだけ下げられるかが勝負になります。
重要ポイント:約100坪までの自宅の土地なら敷地全体が80%減額の対象になります。都市部の一般的な住宅はほぼカバーされます。
この特例を使えるかどうかは、自宅の土地を「誰が相続するか」で決まります。要件は次の3パターンです。
| 相続する人 | 主な要件 |
|---|---|
| 配偶者 | 無条件で適用できる |
| 同居していた親族 | 相続開始時に同居+申告期限まで所有・居住 |
| 別居の親族(家なき子) | 持ち家がないなど厳しい要件を満たす場合のみ |
表の見方:配偶者以外の子などが相続するなら、「同居していたかどうか」が特例の分かれ目になります。この記事では黄色の行の「同居」を掘り下げます。
同居親族は子に限りません。同居していた孫や兄弟姉妹などの親族が相続や遺贈で取得する場合も、要件を満たせば対象になります。
本記事は「同居」に絞って解説します。特例全体の適用要件や計算方法、事業用・貸付用の土地の扱いは、下記の記事で解説しています。

同居の節税効果を考える前に、そもそも相続税がかかる家庭かを確認しましょう。財産の合計が基礎控除以下なら、特例を使うまでもなく相続税は0円です。
基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。相続放棄した人がいても、基礎控除の計算では人数に含めます。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
表の見方:実家の土地と預貯金の合計がこの額を超えそうなら、同居による特例の効果を検討する価値があります。都市部の持ち家世帯は超えるケースが多くあります。
相続税がかかるかどうかの判定は、下記の記事で解説しています。


同居の効果を具体的な数字で確認します。同じ財産でも、同居しているかどうかで税額は数百万円変わります。
いずれも一般的な条件による目安です。実際の税額は財産構成や要件の充足状況で変わります。
父が亡くなり、実家の土地5,000万円(330㎡以内)と預貯金3,000万円、合計8,000万円を長男と長女が相続するケースで試算します。母はすでに他界しています。
実家の土地5,000万円は、都市部の一般的な戸建てなら十分あり得る水準です。「うちは大した財産はない」と思っている家庭でも、土地だけで基礎控除に迫ることがあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実家の土地 | 5,000万円(330㎡以内) |
| 預貯金 | 3,000万円 |
| 相続人 | 長男・長女の2人 |
| 基礎控除 | 4,200万円 |
表の見方:特例を使わなければ財産合計8,000万円で、基礎控除4,200万円を大きく超えます。長男が父と同居していたかどうかで結果がどう変わるかを見ていきます。
長男が父と同居しており、実家の土地を相続して住み続ける場合、特例で土地の評価は5,000万円から1,000万円に下がります。
納税額が0円になれば、納税資金の準備も不要です。実家を売らずに住み続けながら相続できることが、この特例の最大の価値です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 土地の評価額(80%減額後) | 1,000万円 |
| 財産合計 | 4,000万円 |
| 基礎控除 | 4,200万円 |
| 相続税額 | 0円(要申告) |
表の見方:特例適用後の財産合計4,000万円は基礎控除を下回り、相続税は0円になります。ただし特例の適用には申告が必要です。
計算ロジック:【前提】長男が同居し、申告期限まで所有・居住。土地5,000万円×80%減=1,000万円。1,000万円+預貯金3,000万円=4,000万円<基礎控除4,200万円のため課税されません。
長男の住まいの状況別に、家族全体の相続税を3パターンで比較します。
パターンA:長男が父と同居していた(特例あり)。
パターンB:長男は持ち家に住む別居(特例なし)。
パターンC:長男は賃貸住まいの別居で、家なき子特例の要件を満たす。
パターンBの470万円は、申告期限までに現金で納める必要があります。実家しか財産がない場合、納税資金の工面も問題になります。
| パターン | 土地の評価額 | 相続税額(2人合計) |
|---|---|---|
| A|同居していた | 1,000万円 | 0円 |
| B|別居(持ち家あり) | 5,000万円 | 470万円 |
| C|別居(家なき子に該当) | 1,000万円 | 0円 |
表の見方:同居の有無だけで470万円の差がつきます。別居でも持ち家がなければ家なき子特例で同じ効果を得られる場合があります。
重要ポイント:分かれ目は「同居していたか」または「家なき子に該当するか」です。どちらにも当てはまらないと、特例なしの税額を納めることになります。
同居は投資も借入もいらず、いまの暮らしの延長で実現できる対策です。使える立場にあるなら、活かさない手はありません。
計算ロジック:【前提】パターンBは課税遺産総額8,000万円−4,200万円=3,800万円を法定相続分で按分し、各1,900万円×15%−50万円=235万円×2人=470万円(相続税率は2026年時点)。
特例の効果は、財産に占める土地の割合で変わります。預貯金が多い家庭では、特例を使っても課税が残ります。
同じ土地5,000万円でも、預貯金が6,000万円ある家庭で比較してみましょう。
預貯金が多い家庭では、生前贈与や生命保険の非課税枠など、他の対策との組み合わせも視野に入れると効果が高まります。
| ケース | 特例なし | 特例あり(同居) |
|---|---|---|
| 財産合計 | 1億1,000万円 | 7,000万円 |
| 相続税額(2人合計) | 960万円 | 320万円 |
表の見方:0円にはなりませんが、それでも同居の有無で640万円の差がつきます。財産が大きい家庭ほど、特例の金額的な効果はむしろ大きくなります。
計算ロジック:【前提】土地5,000万円+預貯金6,000万円・子2人・法定相続分で分割・2026年時点の税率。特例ありは土地1,000万円+預貯金6,000万円=7,000万円で計算しています。
自分の家庭で試算するには、実家の土地の評価額の目安が必要です。次の2つの方法で概算できます。
【方法1】路線価で計算する
国税庁の路線価図で実家の前の道路の路線価(1㎡あたり)を調べ、土地の面積を掛けます。
【方法2】固定資産税評価額から推定する
毎年届く固定資産税の課税明細書の土地の評価額を0.7で割ると、相続税評価額のおおよその目安になります。
正確な評価は土地の形状などで変わりますが、概算がわかれば「同居でいくら減るか」のイメージがつかめます。
路線価は国税庁のサイトで無料公開されており、毎年7月に更新されます。実家の住所で検索するだけなので、まず調べてみましょう。
重要ポイント:概算評価額×80%が同居による減額の目安です。「路線価×面積」を一度計算してみることが、検討の第一歩になります。

特例の適用で最も争いになるのが「同居していたといえるか」です。判定の物差しは住民票ではなく、生活の実態です。
ここでは判定の考え方と、認められるケース・認められないケースを整理します。
税務上の「同居」とは、同じ家で寝起きし、日常生活をともにしていることを指します。ポイントは、その家が本人の「生活の拠点」といえるかどうかです。
実家と自宅を行き来する二拠点生活の場合も、どちらが「主たる拠点」かで判断されます。滞在日数や生活の中身が問われます。
住民票がどこにあるかは判定材料のひとつにすぎません。実際にどこで寝て、食事をし、生活していたかという事実で判断されます。
なお、財布が同じかどうか(生計を一にするか)は、この場面では直接の要件ではありません。同じ家で寝起きしている事実が核心です。
同居していた期間の長さに要件はありません。亡くなる直前に始めた同居でも、生活の拠点を移した実態があれば認められる可能性があります。
重要ポイント:判定は「生活の拠点が実家にあったか」の実態勝負です。書類の形式ではなく、暮らしの事実が問われます。
よくある10のケースの判定結果を一覧にまとめました。自分の状況に近いものを確認してください。
実際の判定は個別事情を踏まえた総合判断です。○のケースでも事実関係しだいで結論が変わることがあるため、迷ったら専門家に確認しましょう。
| ケース | 判定 |
|---|---|
| 子が単身赴任中(家族は実家に居住) | ○ 認められる |
| 親が入院中に亡くなった | ○ 認められる |
| 自宅の建て替え・建築中に相続が発生 | ○ 認められる場合あり |
| 親が老人ホームに入居していた | △ 条件を満たせば認められる |
| 二世帯住宅に住んでいた | △ 登記の形で決まる |
| 住民票だけ実家に移していた | × 認められない |
| 介護のための一時的な寝泊まり | × 認められない |
| 週末だけ実家に帰っていた | × 認められない |
| 同じ敷地内の別の建物に住んでいた | × 認められない |
| 家族全員で転勤し実家が空き家 | × 認められない |
表の見方:○は「生活の拠点が実家にある」と説明できるケース、×は拠点が別にあるケースです。△の老人ホームと二世帯住宅は条件しだいのため、次の章で詳しく解説します。
単身赴任は、仕事の都合でやむを得ず離れているだけで、赴任が終われば実家に戻ることが想定されます。生活の拠点は実家のままと判断され、同居と認められます。
ただし、配偶者や子どもも一緒に赴任先へ引っ越していた場合は、家族の生活の拠点ごと移ったとみなされ、認められません。
親が入院中に亡くなった場合も、退院すれば自宅に戻る前提のため、同居の状態は続いていたと扱われます。
自宅の建て替え中に相続が発生した場合も、完成後にその家に住むのであれば、認められる余地があります。個別性が高いため専門家に確認しましょう。
建築中のケースでは、完成する建物が親または子の所有であること、申告期限までに実際に住み始めることが判断の目安になります。
重要ポイント:共通するのは「離れているのは一時的で、拠点は実家」と説明できることです。事情を示す資料を残しておくと安心です。
住民票だけを実家に移し、実際は別の家で暮らしているケースは、同居とは認められません。むしろ形だけ整えた分、悪質と見られるおそれがあります。
介護のために泊まり込んでいた場合も、自分の家が別にあるなら生活の拠点は移っていないと判断されます。週末だけ実家に帰る場合も同じです。
同じ敷地内でも、別の建物(離れや隣に建てた家)に住んでいた場合は、同じ家での同居にはあたりません。
また、単身赴任と違い、家族全員で転勤先に引っ越して実家が空き家になっていた場合は、生活の拠点ごと移ったとみなされ認められません。
注意:介護での寝泊まりや週末の帰省は、心情的には「同居」でも税務上は同居と認められません。生活の拠点そのものを移しているかが基準です。
同居の実態があっても、それを示せなければ税務調査で不利になります。日常の記録が、そのまま同居の証拠になります。
【同居の証拠になる主な資料】
資料1:住民票・運転免許証・健康保険証の住所
資料2:郵便物や宅配便の届け先の記録
資料3:光熱費の請求書・使用量の推移(同居後に増えているか)
資料4:通勤定期の区間・勤務先に届け出た住所
特に亡くなる直前に同居を始めた場合は、引っ越しの記録(業者の領収書など)も残しておくと説明しやすくなります。
介護をしていた場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターとのやり取りの記録も、生活実態を補強する資料になります。
重要ポイント:証拠は後から作れません。同居を始めた時点から住所変更と記録の保管を習慣にしておきましょう。

判定が特に迷いやすいのが、老人ホーム入居と二世帯住宅です。どちらも「条件を満たせば同居扱い」になります。
ここでは老人ホームの3条件、入院との違い、二世帯住宅の登記の考え方を解説します。
同居していた親が老人ホームに入居し、そのまま亡くなった場合でも、次の条件を満たせば同居の状態が続いていたものとして扱われます。
【老人ホーム入居でも同居扱いになる3つの条件】
条件1:入居時に要介護認定または要支援認定を受けていた
条件2:都道府県に届出のある老人ホーム等に入居していた
条件3:入居後、自宅を賃貸に出したり他人の住まいにしたりしていない
子はそのまま実家に住み続けていることが前提です。親の入居と入れ替わりで子が引っ越してきた場合は、同居の実態がないため認められません。
つまり「同居していた実績」が先にあり、その後の入居であることが大切です。入居のタイミングと住まいの動きは時系列で整理しておきましょう。
注意:元気なうちに入居した場合や、入居後に自宅を賃貸に出した場合は対象外です。要介護認定の時期と自宅の使い方がポイントになります。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
同じ「家を離れる」でも、入院と老人ホーム入居では扱いが異なります。入院は治療のための一時的な不在で、退院すれば自宅に戻る前提だからです。
入院が長期に及んでいても、自宅に家財が残り、戻る前提が保たれていれば、生活の本拠は自宅のままと考えられます。
入院中に亡くなった場合、老人ホームのような細かい条件はなく、原則としてそれまでの同居状態が続いていたものと扱われます。
一方、老人ホームは生活の場そのものが移るため、要介護認定などの条件つきで例外的に認められる、という関係です。
| 項目 | 入院 | 老人ホーム入居 |
|---|---|---|
| 不在の性質 | 治療のための一時的な不在 | 生活の場の移転 |
| 同居の扱い | 原則そのまま継続 | 3つの条件を満たせば継続 |
| 主な確認事項 | 特になし | 要介護認定・施設の届出・自宅の使い方 |
表の見方:どちらも「自宅に戻る前提の不在かどうか」が発想の軸です。老人ホームだけ条件の確認が必要と覚えておきましょう。
重要ポイント:入院は原則OK、老人ホームは3条件つきでOKという整理で覚えておきましょう。
二世帯住宅は、2014年の改正以降、玄関もキッチンも別の完全分離型であっても同居として扱われるようになりました。
ただし1つだけ落とし穴があります。建物を親世帯部分と子世帯部分で分けて登記する「区分所有登記」をしていると、別々の家とみなされ、同居と認められません。
建物が親の単独名義、または親子の共有名義であれば問題ありません。これから二世帯住宅を建てる人は、登記の形を必ず確認してください。
すでに区分所有登記をしている場合、登記の変更(合併など)には費用と時間がかかります。相続の直前では間に合わないこともあるため、早めに専門家へ相談しましょう。
注意:二世帯住宅は区分所有登記をしているだけで特例が使えなくなります。建築時・購入時に登記の形を要確認です。
二世帯住宅の間取り別の扱いや建て方の詳細は、下記の記事で解説しています。


同居はこれから始めても間に合う対策です。ただし、始め方を間違えると特例が使えず、同居の苦労だけが残ります。
ここでは同居開始前に確認すべきこと、やってはいけないこと、開始の手順を解説します。
見落とされがちですが、同居の場所はどちらの家でもよいわけではありません。特例の対象は「亡くなった人の自宅の土地」です。
子の家に親を呼び寄せて同居した場合、親の自宅は空き家になり、「亡くなった人が住んでいた自宅」ではなくなります。この形では実家の土地に特例を使えません。
相続税の観点では、子が親の家に移り住む形が基本です。呼び寄せ同居を選ぶなら、空いた実家をどうするか(売却・賃貸・家なき子の可能性)もセットで検討しましょう。
もちろん、介護や通勤の事情で呼び寄せが最善という家庭もあります。その場合は、実家の土地の特例は諦め、他の対策で補う設計になります。
注意:特例が使えるのは「親の家」での同居です。子の家への呼び寄せでは実家の土地に適用できません。同居の方向を最初に決めましょう。
特例には「何年以上同居していること」という期間の要件がありません。極端にいえば、亡くなる直前に始めた同居でも認められる可能性があります。
ただし、期間が短いほど「本当に生活の拠点を移していたのか」を厳しく見られます。荷物を運び、寝起きし、生活費を共にする実態が必要です。
親の体調が気になり始めたら、早めに同居を検討する。これが税務上も生活上も最も無理のない進め方です。
直前の同居は、他の相続人から「特例目当て」と見られて感情的な火種にもなりがちです。その意味でも早めの開始が賢明です。
重要ポイント:同居に期間の要件はありませんが、短期間の同居ほど実態の証明が重要になります。早く始めるほど確実です。
「住民票だけ実家に移しておけば大丈夫」という話を耳にしますが、これは通用しません。むしろ税務調査で狙われる典型パターンです。
税務署は住民票のほかに、次のような客観的な事実で生活の拠点を確認します。
【税務署が確認する主な事実】
確認1:電気・ガス・水道の使用量(誰が使っていたか)
確認2:郵便物の届け先・通勤定期の区間
確認3:近隣への聞き取りや勤務先の記録
形だけの同居が否認されれば、特例分の追徴に加えて加算税もかかります。実態のない対策は、やらないほうがましです。
注意:住民票の移動だけの「形だけ同居」は光熱費や郵便物の記録から必ず見破られます。実際に生活の拠点を移すことが大前提です。
同居を始める前に、実家の建物の名義と登記の状態も確認しておきましょう。ここに問題があると、同居しても特例が使えないことがあります。
二世帯住宅に建て替える場合は、区分所有登記を避けることが必須です。リフォーム資金の出し方によっても、名義や贈与の問題が生じます。
土地や建物が親以外の名義になっている場合や、共有になっている場合は、事前に税理士へ相談して整理しておくと安心です。
登記の状態は、法務局で登記事項証明書を取れば誰でも確認できます。実家の登記を見たことがないなら、一度取り寄せてみましょう。
重要ポイント:同居前に登記簿で建物の名義と登記の形を確認しましょう。建て替え・リフォームの予定があるなら、なおさら事前確認が重要です。
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STEP4の試算は、同居を始める前に受けるのが理想です。始めてからでは選べない選択肢(登記の変更など)があるためです。
重要ポイント:順番のコツは「家族の合意→登記の確認→実態のある引っ越し」です。税金の話だけ先行させると家族間の火種になります。

同居の実態があっても、相続のしかたを誤ると特例は受けられません。「申告期限まで住み続けて売らない」「0円でも申告する」が鉄則です。
ここでは相続時の要件と、母と子のどちらが相続すべきかの考え方を解説します。
同居親族が特例を受けるには、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月)まで、その家に住み続け、土地を所有し続ける必要があります。
申告期限より前に売却したり引っ越したりすると、特例は使えません。売却を考えている場合も、申告期限の後に行いましょう。
申告期限を過ぎれば、売却しても適用済みの特例が取り消されることはありません。要件を満たすのは「申告期限まで」です。
また、特例を使うには遺産分割が確定していることが前提です。誰が実家を相続するかで揉めると、適用が危うくなります。
期限までに分割がまとまらない場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えていったん申告し、分割確定後に更正の請求で特例分の還付を受ける方法があります。
ただし、いったん特例なしの税額を納める必要があり、資金負担は重くなります。やはり期限内に分割をまとめるのが最善です。
注意:売却や住み替えは申告期限(10ヶ月)を過ぎてからにしてください。期限前に動くと特例そのものを失います。
特例を使って相続税が0円になる場合でも、申告書の提出は必須です。申告することが特例の適用条件だからです。
「0円だから申告しなくていい」と放置すると、特例が適用されず、本来不要だった税額を追徴されるおそれがあります。
基礎控除以下で申告不要なのは、特例を使わない場合の話です。特例で0円になるケースとの違いに注意してください。
申告書には特例の計算書(第11・11の2表の付表)や、同居の事実を示す書類を添付します。書類の準備も含めて早めに動きましょう。
老人ホーム入居のケースでは、要介護認定がわかる書類(介護保険の被保険者証の写しなど)や施設の入居契約書の写しも必要になります。
重要ポイント:特例で0円になるケースこそ申告漏れが起きやすい落とし穴です。「0円=申告不要」ではありません。
父が亡くなり、母と同居の子が残された場合、実家は母と子のどちらが相続しても特例を使えます。母は無条件、子は同居要件でどちらも適用できるからです。
なお、財産が実家中心の家庭で子が実家を相続すると、母の手元に残る財産が少なくなります。母の生活資金とのバランスにも配慮が必要です。
ポイントは、次に母が亡くなる二次相続まで含めて考えることです。それぞれのメリットを比較します。
| 相続する人 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 母(配偶者) | 配偶者の税額軽減も使え一次相続は楽 | 二次相続で実家が再び課税対象になる |
| 同居の子 | 実家が二次相続の財産から外れる | 一次相続で子の取得分に課税の可能性 |
表の見方:同居の子が相続すれば、実家は二次相続の課税対象から外れます。一次・二次の合計で有利になるケースが多い選択肢です。
重要ポイント:母が実家を相続して子との同居が続けば、二次相続でも子が特例を使える可能性があります。最適解は家庭ごとに違うため、両パターンの試算が確実です。
母自身の預貯金など固有財産が多い場合は、二次相続の負担が膨らみやすく、子が一次相続で実家を引き継ぐメリットが大きくなります。
実家を相続したら、名義変更(相続登記)も忘れてはいけません。2024年から相続登記は義務化されています。
相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になります。
登記をしないまま放置すると、次の世代の相続で権利関係が複雑になり、実家の売却や活用もできなくなります。申告とあわせて早めに済ませましょう。
登記には固定資産税評価額の0.4%の登録免許税がかかります。手続きは司法書士に依頼するのが一般的です。
注意:相続登記は2024年から義務化され、3年以内に行わないと過料の対象です。相続税の申告と並行して進めてください。
実家を相続したときの税額と手続きの全体像は、下記の記事で解説しています。


仕事や家庭の事情で同居が難しい人にも道はあります。持ち家がない別居の子なら「家なき子特例」で同じ80%減額を受けられる場合があります。
ここでは家なき子特例の要件と、注意すべき改正・落とし穴を解説します。
家なき子特例は、賃貸住まいなどで持ち家のない別居の親族が実家の土地を相続した場合に、同居親族と同じ80%減額を認める制度です。
「いずれ実家に戻って住む人」を想定した制度のため、持ち家がないことが中心的な条件になっています。
同居親族と違い、相続後にその家へ住む義務はありません。申告期限まで所有し続ければ、賃貸住まいのままでも適用されます。
転勤族で賃貸住まいの子や、社宅暮らしの子が典型的な対象者です。同居できない事情がある家庭は、まずこの特例の要件を確認しましょう。
重要ポイント:同居がすべてではありません。賃貸住まいの別居の子なら家なき子特例という選択肢があります。
家なき子特例の適用には、次の要件をすべて満たす必要があります。
【家なき子特例の4要件】
要件1:亡くなった人に配偶者も同居の相続人もいない
要件2:相続開始前3年以内に、自分・配偶者・3親等内の親族などが持つ家に住んだことがない
要件3:相続開始時に住んでいる家を過去に所有したことがない
要件4:相続した土地を申告期限まで所有し続ける
2018年の改正で、自分の持ち家を親族に売って形だけ「家なし」になる抜け道は封じられました。要件2・3はそのための規定です。
「これから持ち家を売って賃貸に移り、3年待って要件を満たす」といった計画は、期間の壁と否認リスクの両面で現実的ではありません。
自宅を売却して同じ家に賃借で住み続けるリースバックも、要件3(過去にその家を所有していないこと)に引っかかり適用できません。
要件の判定は時期や親族の範囲が絡んで複雑です。該当しそうな場合は、自己判断せず税理士に確認しましょう。
注意:家なき子特例は4要件をひとつでも欠くと使えません。3年以内に親族の家に住んだ経歴なども対象外の原因になります。
家なき子特例には「亡くなった人に配偶者も同居の相続人もいない」という前提条件があります。
つまり、父が亡くなって母が健在という一次相続では、別居の子は家なき子特例を使えません。使える可能性があるのは、両親とも亡くなった二次相続からです。
二次相続では配偶者の税額軽減も使えず、税負担が重くなりがちです。母との同居は、この二次相続で特例を確保する数少ない手段になります。
同居が難しい場合は、二次相続までに家なき子の要件(賃貸住まいなど)を満たす状態を整えておくという考え方もあります。
重要ポイント:負担が重い二次相続こそ特例が効きます。「残された親との同居」は二次相続対策の柱になります。
親が老人ホームに入った後などに、空いた実家を賃貸に出すと、居住用の特例は使えなくなります。
賃貸に出した場合は貸付事業用の扱いとなり、減額は200㎡まで・50%に縮小します。家なき子特例の前提も崩れます。
空き家のまま維持するにも管理の手間と固定資産税はかかります。「貸す・売る・住む」の出口を家族で決めてから動くことが大切です。
将来だれかが住む可能性があるなら、安易に貸さないほうが有利なことも多いのです。賃料収入と特例の効果を比較してから決めましょう。
重要ポイント:空いた実家を貸す前に「賃料収入」と「特例80%減の効果」を比較してください。貸した瞬間に数百万円の節税余地が消えることがあります。

同居による節税は、家族間のトラブルと隣り合わせです。よくある揉めごとは、事前の話し合いと設計でほぼ防げます。
ここでは兄弟間の不公平感、形だけ同居の否認、トラブル回避のチェックリストを解説します。
同居した子が実家を相続すると、財産の大部分が1人に集中しがちです。他の兄弟姉妹が不満を持ち、遺産分割で揉める典型パターンです。
事例1:同居の長男が実家(財産の7割)を相続する案に、次男が「介護もしていないのに」と反発し、調停に発展した。
対策:実家を相続する子が、他の相続人に代償金を支払う代償分割が有効です。生命保険で代償金の原資を準備しておくと実行しやすくなります。
預貯金など実家以外の財産を他の兄弟に厚く配分する、生命保険の受取人を別居の子にするなど、全体のバランスの取り方はいくつもあります。
事例2:同居と介護の負担が長女に集中していたのに、法定相続分どおりの分割を求められて感情的な対立になった。
対策:親が元気なうちに遺言書を作り、同居・介護の貢献をどう反映するかを家族で共有しておきます。寄与分の主張は争いになりやすいため、事前の意思表示が肝心です。
重要ポイント:同居による節税の恩恵は家族全体で共有できます。「同居で税金が減る分、皆の取り分も増える」ことを共通認識にすると話し合いが進みます。
同居生活そのものにも、後のトラブルの種になりやすいお金の論点があります。始める前にルールを決めておきましょう。
【決めておきたいお金のルール】
ルール1:生活費・光熱費の分担(誰がいくら負担するか)
ルール2:リフォーム費用の出し方(名義と負担者のずれは贈与の問題に)
ルール3:介護費用の負担と、介護保険サービスの利用方針
特に、親名義の家のリフォーム代を子が全額負担すると、親への贈与とみなされる場合があります。金額が大きい工事の前には税理士に確認しましょう。
重要ポイント:お金のルールは同居を始める前に決めるのが唯一のタイミングです。始まってからの交渉は角が立ちます。
特例ほしさに同居の形だけ整えるのは、最も危険なパターンです。
事例:住民票を実家に移して同居を装ったが、実際は自分のマンションで生活。税務調査で光熱費と通勤記録から別居と判定され、特例を否認された。
実家の土地の特例は金額が大きいため、税務調査でも重点的に確認される項目です。「同居の実態」は申告後もしばらく問われ続けると考えてください。
否認されると、特例分の相続税に加えて過少申告加算税や延滞税がかかります。数百万円の追徴になることも珍しくありません。
対策:実態を作れないなら同居を装わないことです。家なき子特例や他の節税策など、実態に合った方法を選びましょう。
注意:形だけの同居は否認+加算税で「節税額より高くつく」結果になります。実態のない対策には手を出さないでください。
同居と相続をめぐるトラブルを防ぐために、次の項目を確認しておきましょう。
重要ポイント:チェックの半分は税金ではなく家族の合意に関する項目です。節税は家族の納得があってこそ活きます。

同居には数百万円の節税効果がありますが、それだけで決めるのは危険です。暮らしの変化と将来の計画まで含めて判断しましょう。
ここでは生活面のメリットと負担、売却予定がある場合の注意、家族会議の進め方を解説します。
同居には税金以外のメリットもあります。親の見守りや介護がしやすく、生活費や住居費を抑えられ、孫の世話を頼めることもあります。
一方で、生活リズムやプライバシーの問題、配偶者の心理的負担、介護が長期化したときの疲弊など、負担も現実にあります。
負担の多くは、住まいの工夫で軽くできます。生活空間を分けた二世帯化や、家事・介護の分担ルールづくりも同居設計の一部です。
いったん同居を始めてから解消すると、感情面のダメージは大きくなります。お試し期間を設けるなど、段階を踏む工夫も有効です。
節税のためだけの同居は、家族関係がこじれたときに続きません。「同居しても無理なく暮らせるか」を最優先で考えましょう。
どうしても同居が難しいなら、近くに住んで日常的に行き来する「近居」も選択肢です。特例は使えませんが、見守りと生活の両立という目的は果たせます。
【同居を決める前に考えたいこと】
視点1:配偶者・子どもを含めた家族全員が納得しているか
視点2:介護が本格化したときの分担を想定できているか
視点3:完全同居か二世帯かなど、距離感の選択肢を検討したか
重要ポイント:「暮らしが成り立つこと」が先、節税は後です。数百万円の節税より、家族関係の破綻のほうが高くつきます。
特例で評価が下がるのは、あくまで相続税の計算上の話です。相続後に実家を売って現金化する予定なら、前提が変わります。
申告期限前に売却すると特例自体が使えません。また、将来的に誰も住まないなら、維持費や空き家リスクも考える必要があります。
売却も視野に入れる場合は、取得費加算の特例や空き家の譲渡所得の特別控除など、売却時の税制もあわせて検討しましょう。
同居していた家に自分も住み続けてから売る場合は、居住用財産の3,000万円特別控除を使える可能性もあります。売却時期と税制はセットで設計しましょう。
重要ポイント:実家に住み続けるのか、いずれ売るのかで最適な選択は変わります。出口(実家の将来)まで決めてから同居を判断しましょう。
参照元:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
空き家の3,000万円控除の要件は、下記の記事で解説しています。

同居の判断は、親子2人だけで決めずに、関係する家族全員で話し合うのが鉄則です。テーマは次の3つに整理できます。
話し合った内容は簡単なメモでよいので残しておきましょう。後から「聞いていない」を防ぐ効果があります。
【テーマ1】暮らし:同居の形と生活ルール
完全同居か二世帯か、生活費の分担、介護が必要になったときの役割を決めます。
【テーマ2】財産:実家の相続と分け方
誰が実家を相続するか、他の兄弟姉妹への配慮(代償金・遺言)をどうするかを共有します。
【テーマ3】税金:試算と手続きの確認
同居した場合・しない場合の税額を試算し、登記や申告の段取りを専門家に確認します。
重要ポイント:話し合いには税理士の試算という「客観的な数字」を持ち込むと感情論になりにくく、まとまりやすくなります。

同居の判定はグレーゾーンが多く、税務署との見解が分かれやすい論点です。相続税の対応実績がある税理士なら、実態をどう説明すれば認められるかを判断できます。複数の税理士に一括で相談し、比較して選ぶのがおすすめです。
同居に「◯年以上」といった明確な基準はありません。生活の拠点がどこにあったかという実態で判定されるため、説明の組み立てが結果を左右します。
相続税の対応実績がある税理士が必要な理由
本記事の試算では、同居の有無で相続税が0円と470万円に分かれました。判定を誤ると、この差がそのまま負担の差になります。
相続税に対応している税理士でも、小規模宅地等の特例の実務経験には差があります。見積りや初回相談で、次の3点を比べてみてください。
「申告実績数・グレーゾーンの判定根拠を示せるか・二次相続まで見るか」の3点で見分けられます。
判定ポイント1:相続税申告の実績数
年間の相続税申告の件数を確認します。「年間5件」と「年間100件以上」では、特例の要件判定や添付資料の作り方に差が出ます。→ 実績数が多い税理士のほうが、適用の可否を正しく判断できると判定できます。
判定ポイント2:グレーゾーンの判定根拠を示せるか
「同居と認められると思います」で終わらず、通達や裁決例など根拠を挙げて説明できるかを見ます。→ 根拠を示せる税理士のほうが、税務調査で指摘されても耐えられると判定できます。
判定ポイント3:二次相続まで見るか
母と同居の子のどちらが実家を相続するかで、合計税額は変わります。両方の案を試算してくれるかを確認します。→ 二次相続まで見る税理士のほうが、家族全体で損しない案を出せると判定できます。
同居の判定を自己判断すると、適用できるはずの特例を逃したり、逆に否認されたりします。80%減額が使えるかどうかで、税額は数百万円変わります。
特に見落としが多いのは次のようなケースです。
相談せずに進めた場合のリスク
これらの多くは、申告前の確認で防げます。相談は無料のことが多く、同居を始める前なら選択肢はさらに広がります。
実際に一括相談・見積りを利用する流れは、次の4ステップです。フォームの記入自体は5分ほどで終わります。
相続税の申告期限は10ヶ月です。同居の判定と資料集めから逆算して早めに動いてください。
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重要ポイント:「同居していた期間」と「建物の登記形態」を最初に伝えてください。この2点で適用の可否がほぼ決まるため、見積りの精度が大きく上がります。
使える可能性があります。同居期間の長さに要件はなく、生活の拠点を実際に移していたかどうかで判断されます。ただし期間が短いほど実態を厳しく確認されるため、引っ越しや生活の記録を残しておくことが重要です。
なりません。同居は住民票ではなく生活の実態で判定され、税務署は光熱費の使用状況や郵便物、通勤記録などで確認します。形だけの同居は否認され、加算税などの追徴につながります。
玄関やキッチンが別の完全分離型でも、原則として同居と認められます。ただし建物を親世帯と子世帯で分けて登記する「区分所有登記」をしている場合は認められません。登記の形が分かれ目です。
入居時に要介護認定または要支援認定を受けていた、届出のある施設に入居していた、自宅を賃貸に出していない、という条件を満たせば、同居の状態が続いていたものとして特例を使えます。
あります。亡くなった人に配偶者や同居の相続人がおらず、相続する子が3年以上持ち家に住んでいないなどの要件を満たせば、「家なき子特例」として同じ80%減額を受けられます。要件が複雑なため税理士に確認しましょう。
親と同居した場合の相続税の基本
注意点
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年7月時点の法令・税率に基づいて作成しています。相続税法や小規模宅地等の特例の改正により取り扱いが変わる場合があります。最新の制度や個別の判断については、国税庁の情報や相続税の対応実績がある税理士に必ずご確認ください。