相続と贈与はどちらが得?財産額別の分岐点と相続税・贈与税の比較でわかる判断基準

相続_贈与_違い

相続とは、人が亡くなったときに財産を法定相続人などが引き継ぐことをいいます。

贈与とは、生きている人が自分の意思で無償で財産を渡すことです。渡すタイミングと、かかる税金が両者で異なります。

相続には相続税、贈与には贈与税がかかります。この2つは税率・控除・納税時期がそれぞれ違い、同じ財産でも負担額が変わります。

税率表だけを並べると相続税のほうが低く、単純比較では相続が有利に見えます。多くの人がここで判断を止めてしまいます。

しかし相続税は全財産に一度かかり、贈与税は分けた分だけにかかります。前提が違うため、実効税率で見ると結論が変わります。

さらに2024年改正で生前贈与加算が7年に延長され、いつから始めるかで効果が大きく変わるようになりました。

この記事では、相続と贈与の違い、財産額別の合計相続税割合、いくらまで贈与すると得かの分岐点、状況別の選び方、7年加算の影響までを解説します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 相続と贈与の損得は税率表では決まらず、財産額ごとに「いくらまで贈与すれば得か」の分岐点がある
  • 財産2億円・子2人なら年110万円ではなく1人年510万円までの贈与が最も得で、その年の差は104万円
  • 相続税がかからない家庭は贈与税を払うだけ損になるため、まず基礎控除を超えるかを確認する
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相続と贈与の違いを一覧で比較|税金・手続き・渡せる相手

相続と贈与は、どちらも財産を次の世代へ引き継ぐ手段ですが、性質が大きく異なります。違いは渡すタイミングだけではありません。

渡せる相手・かかる税金・あとから撤回できるかまで変わります。この違いを押さえないと、どちらが得かの比較そのものが成り立ちません

ここでは相続と贈与の基本的な違い、相続税と贈与税の違い、贈与に必要な判断能力、両者の共通点、よくある誤解を解説します。

相続と贈与の基本的な違い

相続と贈与の最大の違いは、財産を渡すタイミングです。相続は人が亡くなったときに発生し、贈与は生きているうちに自分の意思で行います。

相続で財産を受け取るのは、原則として法定相続人です。一方の贈与は相手を自由に選べ、法定相続人以外の孫や第三者にも渡せます。

また、相続は放棄できますが、贈与は当事者双方の合意で成立する契約です。一度成立した贈与は原則として取り消せません

相続では誰がどの財産を引き継ぐかを遺産分割協議で決めますが、贈与は渡す側が相手とタイミングを自由に決められます。この自由度が、生前贈与を相続税対策として使うときの強みです。

項目 相続 贈与
渡すタイミング 亡くなったとき 生きているうち
渡せる相手 原則、法定相続人 誰でも自由に選べる
当事者の合意 不要(死亡で発生) 必要(双方の意思表示)
かかる税金 相続税 贈与税
放棄・撤回 相続放棄が可能 成立後は原則撤回不可
手続きの起点 死亡後に相続人が動く 生前に当事者間で完結

表の見方:相続は亡くなったときに法定相続人へ、贈与は生前に自由な相手へ渡せます。渡すタイミングと相手の自由度が大きな違いです。

重要ポイント:見落としやすいのは「当事者の合意」の行です。贈与は契約なので、渡す側が動けなくなると実行できません

相続税と贈与税の違い|税率・控除・納税時期

相続税と贈与税は、税率・控除・納税時期の3点で異なります。まず税率から確認します。

どちらも財産が多いほど税率が上がる累進課税で、最高税率は55%です。ただし同じ税率に達するまでの金額が大きく違います。

贈与税は少額でも税率が急に上がります。贈与税で30%に達するのは基礎控除後1,000万円ですが、相続税で30%に達するのは法定相続分5,000万円超からです

なお贈与税の税率には特例税率と一般税率があります。父母や祖父母から18歳以上の子・孫への贈与には、税率の低い特例税率が使えます。

法定相続分に応ずる取得金額 相続税率 控除額
1,000万円以下 10% なし
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円
基礎控除後の課税価格 贈与税率(特例) 控除額
200万円以下 10% なし
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

表の見方:2つの表は税率の刻み方が違います。相続税は1,000万円ごとに緩やかに上がり、贈与税は200万円ごとに急に上がります。

控除の大きさも異なります。相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、贈与税の基礎控除は年110万円です。

ただし贈与の110万円は毎年、しかも受け取る人ごとに使えます。単年では小さくても、年数と人数をかければ大きな枠になります。

納税時期は、相続税が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内、贈与税が翌年2月1日から3月15日までです。

項目 相続税 贈与税
基礎控除 3,000万円+600万円×法定相続人の数 年110万円(もらう人ごと)
控除を使える回数 相続時の1回のみ 毎年くり返し使える
配偶者向けの制度 1億6,000万円まで非課税 居住用不動産2,000万円控除
主な特例 小規模宅地等(最大80%減額) 住宅・教育など目的別の非課税
申告・納税の期限 知った日の翌日から10ヶ月以内 翌年2月1日〜3月15日
申告する人 財産を取得した相続人など 財産をもらった人

重要ポイント:単発の控除は相続税が圧倒的に大きい一方、贈与の110万円は毎年・複数人にくり返し使えます。この性質の差が損得を分けます。

参照元:国税庁 No.4155 相続税の税率

参照元:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

贈与は契約|渡す側の判断能力が必要になる

相続と贈与の違いで最も見落とされやすいのが、贈与には渡す側の判断能力が必要だという点です。

相続は死亡によって自動的に発生します。渡す側の意思や状態は関係なく、必ず起こります。

一方の贈与は契約です。渡す側の「あげます」と受け取る側の「もらいます」という意思表示がそろって成立します。

認知症などで意思能力を失うと、贈与そのものができなくなります。意思能力がない状態の贈与は、後から無効と判断されるおそれもあります。

注意:「いずれ贈与しよう」と考えているうちに判断能力が落ちると、贈与という選択肢が消えます。相続だけが残るため、対策の幅が一気に狭まります。

認知症になる前にやっておくべき対策は、下記の記事で解説しています。

相続と贈与に共通する点

相続と贈与は違いが多い一方、共通する点もあります。どちらも財産を次の世代へ移す手段であり、税金がかかる点は同じです。

財産の種類も問いません。現金・不動産・株式のいずれでも渡せ、財産の評価方法も基本的には共通のルールにもとづきます。

また、どちらも受け取った側に所得税はかかりません。相続税・贈与税と所得税は二重に課されない仕組みになっています。

そして最も重要な共通点は、どちらも早めに計画するほど税負担を抑えられることです。準備の早さが結果を左右します。

贈与と所得税の関係は、下記の記事で解説しています。

相続と贈与でよくある3つの誤解

相続と贈与の違いは誤解されやすく、思い込みで動くと損をします。特に多い3つの誤解を確認しておきましょう。

【誤解1】税率表を見比べれば、どちらが得か分かる

相続税は全財産に一度かかり、贈与税は分けた分だけにかかります。前提が違う表を並べても答えは出ません。

【誤解2】年110万円以下の贈与がいちばん得

相続税がかかる家庭では、贈与税を払ってでも多めに贈与したほうが得になります。110万円は最適額ではありません。

【誤解3】贈与すれば必ず節税になる

相続税がかからない家庭では、贈与税を払った分だけ純粋な損です。まず相続税が出るかの確認が先です。

重要ポイント:3つの誤解はいずれも「自分の家庭で相続税がいくら出るか」を確認していないことから生まれます。判定が出発点です。

相続税と贈与税の税率を単純比較しても答えが出ない理由

相続税と贈与税の税率表を並べると、必ず贈与税のほうが高く見えます。しかしこの比較は成り立ちません。

2つの税は「一度に全部」と「分けて少しずつ」という正反対の前提で設計されています。同じ物差しで測れないのです。

ここでは、なぜ単純比較が成り立たないのか、実効税率という見方、判定に使う2つの物差し、そして贈与が損になる場合を解説します。

相続税は全財産に一度・贈与税は分けた分だけにかかる

相続税は、亡くなった時点の全財産にまとめてかかります。「財産を少しずつ相続させる」ことは物理的にできません。

一方の贈与税は、その年に渡した分だけにかかります。何年にも分けて渡すのが通常の使い方です。

つまり相続税は「一度に全部」を前提に、贈与税は「小分けにする」ことを前提に税率が決まっています。

この前提の違いを無視して税率表だけを比べると、必ず贈与税が不利に見えます。比較すべきは税率表ではなく、実際に払う金額です

名目の税率ではなく実効税率で見る

贈与税を正しく評価するには、実効税率で見ます。実効税率とは「実際に払う贈与税÷贈与額」の割合です。

贈与税には年110万円の基礎控除があるため、実効税率は名目の税率よりかなり低くなります。

たとえば1人に年500万円を贈与した場合、特例税率での贈与税は48万5,000円です。名目税率は15%ですが、実効税率は9.7%にとどまります

1人あたりの年間贈与額 贈与税(特例税率) 実効税率 贈与税(一般税率) 実効税率
110万円 0円 0% 0円 0%
200万円 9万円 4.5% 9万円 4.5%
300万円 19万円 6.3% 19万円 6.3%
400万円 33万5,000円 8.4% 33万5,000円 8.4%
500万円 48万5,000円 9.7% 53万円 10.6%
600万円 68万円 11.3% 82万円 13.7%
700万円 88万円 12.6% 112万円 16.0%
800万円 117万円 14.6% 151万円 18.9%
1,000万円 177万円 17.7% 231万円 23.1%

表の見方:1人あたり年500万円までなら、実効税率は10%前後に収まります。相続税の最低税率10%と同じ水準です。

重要ポイント:特例税率と一般税率の差は、年500万円を超えたあたりから開きます。孫や子の配偶者への贈与では一般税率になる場合があるため、適用される税率の確認が必要です。

計算ロジック:【前提】1人あたり年間の贈与額。特例税率は父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に適用。500万円の場合「(500万円−110万円)×15%−10万円=48万5,000円」で、48万5,000円÷500万円=9.7%です。

参照元:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

判定に使う物差しは2つある|合計相続税割合と限界税率

贈与税の実効税率が分かっても、それだけでは判定できません。比べる相手となる相続税側の物差しが必要です。

相続税側の物差しには2種類あります。合計相続税割合と限界税率で、どちらを使うかで結論の積極性が変わります。

合計相続税割合は、一次相続と二次相続を通算した相続税の総額を財産額で割った平均の割合です。保守的な判定になります。

限界税率は、財産を1円減らしたときに相続税が減る率です。限界税率は平均より高いため、積極的な判定になります

物差し 意味 判定の性格
合計相続税割合 一次+二次の相続税総額÷財産額 保守的(贈与額を控えめに出す)
限界税率 財産を1円減らしたときに減る相続税の率 積極的(贈与額を大きく出す)

表の見方:同じ財産額でも、使う物差しで「有利な贈与額」は2倍以上変わります。どちらの物差しで話しているのかを意識してください。

重要ポイント:限界税率だけで判定すると危険です。贈与額を大きくすると相続税の税率帯そのものが下がり、限界税率が当初より低くなります。両方の物差しで挟み込むのが安全です。

相続税がかからないなら贈与は純損失になる

ここまでは相続税がかかる前提の話です。相続税がかからない家庭では、結論が逆になります。

相続税が発生しないのに贈与税を払えば、減らせる相続税がありません。払った贈与税がそのまま純粋な損失になります

国税庁の統計では、相続税の課税割合は亡くなった人の約1割です。9割の家庭では、そもそも相続税が発生しません。

「贈与税は高い」という一般的な感覚は、この9割の人にとっては正しい認識です。相続税がかかる家庭だけで結論が反転します。

注意:相続税がかからない家庭が節税目的で贈与しても、税負担は増えるだけです。必ず基礎控除を超えるかを先に確認してください

重要ポイント:資金援助や争いの予防が目的なら、相続税がかからない家庭でも贈与に意味があります。節税目的かどうかで判断が分かれます。

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算

まず基礎控除で判定する|相続税がかかるかで結論が変わる

相続と贈与の損得を比べる前に、必ず確認すべきことがあります。自分の家庭に相続税がかかるかどうかです。

相続税が出ない家庭では、贈与は節税にならず負担が増えるだけです。判定を飛ばして贈与を始めるのが最も多い失敗です。

ここでは基礎控除の計算方法、超えない場合の考え方、わずかに超える場合の実額、そして老後資金との兼ね合いを解説します。

基礎控除の計算と法定相続人別の一覧

相続税は、財産の合計額が基礎控除を超えたときにだけ発生します。基礎控除は次の式で計算します。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数です。法定相続人が多いほど枠が大きくなります。

法定相続人の数には、相続を放棄した人も含めて数えます。養子は実子がいれば1人まで、いなければ2人までを算入します。

法定相続人の数 基礎控除額 家族構成の例
1人 3,600万円 子1人のみ
2人 4,200万円 子2人/配偶者と子1人
3人 4,800万円 配偶者と子2人
4人 5,400万円 配偶者と子3人
5人 6,000万円 配偶者と子4人

表の見方:財産の合計がこの金額以下なら、原則として相続税の申告も納税も不要です。まず自分の家庭の行を確認してください

重要ポイント:財産の合計には、預金や不動産だけでなく生命保険金や死亡退職金も含めます。土地は路線価、建物は固定資産税評価額で計算します。

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算

相続税がかかるかどうかの判定は、下記の記事で解説しています。

基礎控除以下なら税務上の意味はない

財産が基礎控除以下なら、相続税は発生しません。この場合、節税目的で贈与する理由はなくなります。

たとえば財産4,000万円で法定相続人が2人なら、基礎控除4,200万円以下なので相続税はかかりません。

この家庭が贈与税を払って生前に財産を渡しても、減らせる相続税がありません。払った贈与税がまるごと余分な負担になります

ただし年110万円以下の贈与なら贈与税はかかりません。資金援助や争いの予防が目的なら、この枠内で渡す選択肢は残ります。

注意:相続税がかからない家庭が110万円を超えて贈与すると、節税どころか税負担が純増します。目的が節税なら贈与しないのが正解です。

基礎控除をわずかに超える場合の考え方

基礎控除を少し超える程度なら、相続税額そのものが小さく収まります。無理に贈与を増やす必要はありません。

配偶者と子2人のケースで実額を見てみましょう。財産5,000万円なら、一次と二次を合わせた相続税は合計10万円です。

財産8,000万円でも、一次と二次を合わせた相続税は合計175万円にとどまります。この水準では贈与で削れる金額も小さく、手間に見合いません

贈与には契約書の作成や振込記録の管理といった手間が毎年かかります。削減できる税額が数十万円なら、その手間を続ける意味は薄いといえます。

計算ロジック:【前提】配偶者と子2人。配偶者が50%を取得し配偶者の税額軽減を適用、その後の二次相続で子2人が引き継ぐ想定。財産5,000万円で一次10万円・二次0円、財産8,000万円で一次175万円・二次0円です。

老後資金を削ってまで贈与しない

贈与は財産を手放す行為です。渡しすぎると、自分の老後資金が不足します。

医療費や介護費用は、必要になる時期も金額も読めません。渡した財産は原則として取り戻せません。

さらに7年加算があるため、贈与してもすぐには節税効果が確定しません。生活資金を削って急いで贈与するのは、リスクだけを負う行為です

注意:贈与の計画は「生活に必要な資金を確保したうえで残る分」を対象にしてください。節税額より生活の安全が優先です。

節税と老後資金のバランスの取り方は、下記の記事で解説しています。

自分の財産額でどちらが得か判定する|合計相続税割合の早見表

相続税がかかると分かったら、次は自分の財産額でどちらが得かを判定します。判定は割合の比較で行います。

相続で渡したときの税負担の割合を下回る割合で贈与できるなら、贈与したほうが得です。この一点に集約されます。

ここでは合計相続税割合という考え方、財産額別の早見表、贈与税割合との突き合わせ方、判定の手順を解説します。

一次相続と二次相続を通算した合計相続税割合とは

相続税は、多くの家庭で2回発生します。夫が亡くなったときの一次相続と、その後に妻が亡くなったときの二次相続です。

一次相続では配偶者の税額軽減が使えるため、税額が大きく抑えられます。しかしその分、配偶者が引き継いだ財産に二次相続の税がかかります。

つまり一次相続の税額だけを見ると、負担を過小に見積もります。判定には一次と二次を通算した合計額を使う必要があります

この合計額を財産額で割った割合が合計相続税割合です。相続で渡した場合に、財産の何%が税金として出ていくかを表します。

重要ポイント:配偶者の税額軽減を最大限使うと一次相続の税額は下がりますが、二次相続の税額は上がります。通算で見ないと判断を誤ります

参照元:国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減

財産額別の合計相続税割合早見表

配偶者と子2人の家庭について、財産額別の合計相続税割合を試算しました。自分の財産額に近い行を確認してください。

財産額 一次相続税 二次相続税 合計相続税 合計相続税割合 一次の限界税率
5,000万円 10万円 0円 10万円 0.2% 10%
8,000万円 175万円 0円 175万円 2.2% 10%
1億円 315万円 80万円 395万円 4.0% 15%
1億5,000万円 747万5,000円 395万円 1,142万5,000円 7.6% 15%
2億円 1,350万円 770万円 2,120万円 10.6% 20%
2億5,000万円 1,985万円 1,260万円 3,245万円 13.0% 30%
3億円 2,860万円 1,840万円 4,700万円 15.7% 30%
4億円 4,610万円 3,340万円 7,950万円 19.9% 30%
5億円 6,555万円 4,920万円 1億1,475万円 22.9% 40%

表の見方:財産2億円の家庭なら、相続で渡すと財産の10.6%が税金として出ていきます。この10.6%が贈与と比べる基準値になります

重要ポイント:合計相続税割合は財産額とともに上がります。財産が大きい家庭ほど、高めの贈与税を払っても得になる範囲が広がります。

計算ロジック:【前提】財産はすべて夫の名義で妻の固有財産は0円。一次相続は妻と子2人が相続人で、妻が財産の50%を取得し配偶者の税額軽減を適用。二次相続では妻が取得した50%を子2人が相続。限界税率は一次相続で子の法定相続分に適用される税率です。

参照元:国税庁 No.4155 相続税の税率

贈与税割合と突き合わせて判定する

合計相続税割合が分かったら、贈与税の実効税率と突き合わせます。判定はきわめて単純です。

合計相続税割合を下回る実効税率で贈与できるなら、その贈与は得になります。上回るなら損です。

財産2億円の家庭で見てみましょう。合計相続税割合は10.6%です。特例税率なら1人年500万円の実効税率が9.7%で、10.6%を下回ります。

つまり年500万円までの贈与なら、贈与税を払っても相続で渡すより得になります。年110万円に絞る必要はありません。

財産額 合計相続税割合 下回る贈与額の上限(特例税率) その贈与額の実効税率
1億円 4.0% 1人年180万円 3.9%
1億5,000万円 7.6% 1人年350万円 7.4%
2億円 10.6% 1人年550万円 10.5%
2億5,000万円 13.0% 1人年720万円 12.9%
3億円 15.7% 1人年850万円 15.5%
4億円 19.9% 1人年1,160万円 19.8%

表の見方:この上限は保守的な水準です。合計相続税割合という平均で判定しているため、実際にはもう少し多く贈与しても得になります

計算ロジック:【前提】特例税率・1人あたり年間の贈与額。贈与税額÷贈与額で実効税率を求め、合計相続税割合を下回る最大の贈与額を10万円刻みで探しています。財産2億円なら550万円で実効税率10.5%、560万円では10.7%となり10.6%を超えます。

判定の手順4ステップ

ここまでの内容を、実際に自分の家庭へ当てはめる手順に落とし込みます。4ステップで判定できます。

STEP1
財産の合計額を出す。預金・不動産・株式・生命保険金などを合計し、基礎控除を超えるかを確認します

STEP2
合計相続税割合を調べる。早見表で自分の財産額に近い行を見て、相続で渡した場合の負担割合をつかみます

STEP3
贈与税の実効税率と比べる。その割合を下回る贈与額を確認し、1人あたりの年間贈与額の目安を決めます

STEP4
渡す人数と年数をかける。目安額×人数×続けられる年数で、移せる財産の総額を見積もります

重要ポイント:STEP4で出した総額が財産に対して大きすぎる場合は、贈与を進めるほど財産額が下がり、合計相続税割合も下がります。数年ごとに再計算してください

いくらまで贈与すると得か|財産額別の分岐点早見表

割合の比較は目安としては有効ですが、平均で判定するため保守的に出ます。より正確な答えを出す方法があります。

贈与した場合と贈与しなかった場合の相続税を直接計算し、その差額と贈与税を比べる方法です。これが本当の分岐点です。

ここでは財産額別の分岐点と最も得な贈与額、110万円にこだわる弊害、2つのラインの使い分け、変動への備えを解説します。

最も得な年間贈与額と分岐点の早見表

配偶者と子2人の家庭で、子2人に1人あたり年いくら贈与するのが最も得かを試算しました。

最も得な額は「相続税の減少額から贈与税を引いた金額」が最大になる贈与額です。分岐点はそれを超えると損に転じる上限です。

財産額 最も得な年間贈与額(1人) その年の得 分岐点(これ以上は損)
5,000万円 110万円 10万円 160万円
8,000万円 110万円 13万8,000円 290万円
1億円 310万円 37万5,000円 680万円
1億5,000万円 510万円 70万8,000円 910万円
2億円 510万円 104万円 1,170万円
2億5,000万円 710万円 149万5,000円 1,360万円
3億円 800万円 286万円 2,020万円
4億円 1,110万円 301万5,000円 2,510万円
5億円 1,110万円 464万8,000円 3,470万円

表の見方:財産2億円なら1人年510万円の贈与が最も得で、その年だけで104万円の差が生まれます。1,170万円を超えると損に転じます。

重要ポイント:財産5,000万円・8,000万円の行では最も得な額が110万円です。この規模では贈与税を払う意味がなく、非課税枠に収めるのが正解です

計算ロジック:【前提】配偶者と子2人・特例税率・贈与は1年分のみ・贈与者は7年超生存で加算対象外の想定。子2人に1人あたりG万円を贈与すると財産は2G万円減るため、一次と二次を合わせた相続税を贈与前後で計算し、差額と贈与税2人分を比較しています。

110万円にこだわると節税を取りこぼす

年110万円は「贈与税がかからない上限」であって、「最も得な贈与額」ではありません。ここを混同すると損をします。

財産2億円の家庭で比べてみましょう。1人年110万円の贈与だと、贈与税は0円で、その年の得は44万円です。

これを1人年510万円に増やすと、贈与税100万円を払っても得は104万円になります。同じ1年で60万円の差がつきます

10年続ければ差は600万円規模になります。非課税枠に固執することが、かえって大きな取りこぼしを生みます。

1人あたりの年間贈与額 相続税の減少額 贈与税(2人分) その年の得
110万円(非課税枠のみ) 44万円 0円 44万円
510万円(最も得な額) 204万円 100万円 104万円
1,170万円(分岐点) 468万円 468万円 0円

計算ロジック:【前提】財産2億円・配偶者と子2人・特例税率。一次と二次を合わせた相続税の減少額から贈与税2人分を引いています。510万円の贈与税は「(510万円−110万円)×20%−30万円=50万円」で2人分100万円です。

重要ポイント:相続税がかかる家庭では「贈与税を払わない」ことより「相続税と贈与税の合計を小さくする」ことが目的です。目的を取り違えないでください

保守ラインと積極ラインの使い分け

ここまでに2つの上限が出てきました。合計相続税割合で判定した上限と、直接計算した分岐点です。

前者を保守ライン、後者を積極ラインと呼びます。財産2億円なら保守ラインが1人年550万円、積極ラインが1人年1,170万円です。

この差は大きく見えますが、性質が違います。分岐点ぎりぎりでは得がほぼゼロになり、計算の前提が少しずれるだけで損に転じます

ライン 財産2億円の場合 使いどころ
最も得な額 1人年510万円 通常はここを狙う
保守ライン 1人年550万円 財産が変動しやすい場合の上限
積極ライン(分岐点) 1人年1,170万円 これを超えたら確実に損

表の見方:狙うべきは「最も得な額」です。分岐点は損得が反転する境界にすぎず、そこまで贈与しても得は増えません。

重要ポイント:贈与を何年も続けると財産が減り、最も得な額も下がります。同じ金額を機械的に続けず、数年ごとに見直してください

財産が変動する場合は分岐点より下に置く

早見表は現在の財産額をもとにした試算です。財産が変われば分岐点も動きます。

不動産や株式を多く持つ家庭では、評価額が数年で大きく動きます。評価が下がれば、贈与しすぎだったという結果になりかねません。

相続人の数が変わる可能性もあります。相続人が増えれば基礎控除が増え、相続税が下がるため贈与の効果も縮みます

注意:財産の大半が不動産や自社株の家庭では、分岐点いっぱいまで贈与するのは危険です。最も得な額の7〜8割程度に抑えるほうが安全です。

【計算例】相続と贈与の税額シミュレーション

ここからは実際の税額を計算して比較します。渡し方を変えるだけで負担が大きく動くことを確認してください。

同じ財産・同じ渡す金額でも、方法によって総負担は470万円から824万円まで開きます

前提は遺産1億円・相続人は子2人・子2人に合計2,000万円を渡すケースです。渡す方法を4パターンで比べます。

パターンA|全部相続する場合

まず贈与をせず、1億円すべてを相続で渡す場合です。基礎控除は3,000万円+600万円×2人=4,200万円です。

項目 金額
遺産総額 1億円
基礎控除 4,200万円
課税遺産総額 5,800万円
相続税額(子2人合計) 770万円

計算ロジック:【前提】遺産1億円・子2人。課税遺産総額5,800万円を法定相続分で分けて各2,900万円、2,900万円×15%−50万円=385万円。2人合計で770万円です。

パターンB|一度にまとめて贈与する場合

次に、子2人へ各1,000万円を1年でまとめて贈与し、残り8,000万円を相続で渡す場合です。

贈与税は1人177万円で、2人合計354万円です。残った8,000万円にかかる相続税は470万円になります。

総負担は824万円で、贈与をしないパターンAより54万円増えます。一度に多額を渡すと逆効果です。

計算ロジック:【前提】特例税率。贈与税は「(1,000万円−110万円)×30%−90万円=177万円」で2人分354万円。相続税は課税遺産総額3,800万円を法定相続分で分け、各1,900万円×15%−50万円=235万円で2人分470万円です。

パターンC|複数年に分けて贈与する場合

同じ2,000万円を、子2人へ1人年100万円ずつ10年かけて贈与する場合です。年110万円以下なので贈与税はかかりません。

相続で渡す財産は8,000万円となり、相続税は470万円です。総負担は470万円で、パターンBより354万円軽くなります

なお毎年同じ額を同じ時期に機械的に渡すと、定期贈与とみなされるおそれがあります。贈与のつど契約書を交わしてください。

計算ロジック:【前提】1人年100万円×2人×10年=2,000万円。年110万円以下なので贈与税は0円。相続財産8,000万円に対する相続税470万円がそのまま総負担です。贈与者が7年を超えて生存し、生前贈与加算の対象にならない場合の試算です。

パターンD|相続時精算課税を使う場合

子2人へ各1,000万円を相続時精算課税で贈与する場合です。累計2,500万円の特別控除内なので、贈与税はかかりません。

ただし相続時に贈与分が相続財産へ加算されます。年110万円の基礎控除分を除いた1人890万円、2人で1,780万円が加算されます。

相続財産は8,000万円+1,780万円=9,780万円となり、相続税は737万円です。総負担は737万円で、パターンAより33万円軽くなります

計算ロジック:【前提】相続時精算課税で各1,000万円を贈与。基礎控除110万円を除いた890万円が1人の加算額で2人分1,780万円。課税遺産総額5,580万円を分け、各2,790万円×15%−50万円=368万5,000円で2人分737万円です。

参照元:国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

パターン比較|4パターンの最終負担

4つのパターンを1つの表で比べます。贈与税と相続税の合計で見ることが重要です。

パターン 贈与税 相続税 総負担 Aとの差
A|全部相続 0円 770万円 770万円
B|各1,000万円を一括贈与 354万円 470万円 824万円 54万円の増
C|1人年100万円×10年 0円 470万円 470万円 300万円の減
D|相続時精算課税で各1,000万円 0円 737万円 737万円 33万円の減

表の見方:最も軽いのはCで、最も重いのはBです。BとCの差は354万円で、同じ2,000万円を渡しているのに負担が倍近く違います

重要ポイント:Bのように一括で贈与すると、贈与しないほうが得という結果になります。贈与の効果は分割と年数で決まります

計算ロジック:【前提】遺産1億円・相続人は子2人・特例税率・渡す金額は合計2,000万円で固定。贈与は生前贈与加算の対象外の期間に完了した想定です。Dの相続税が高いのは、贈与した2,000万円のうち1,780万円が相続財産へ戻るためです。

贈与が何年前までさかのぼって加算されるかは、下記の記事で解説しています。

遺言で財産を渡す場合の税金は、下記の記事で解説しています。

相続で渡したほうがよいケース|贈与で渡したほうがよいケース

割合や分岐点の計算は、現金を渡す場合の目安です。財産の種類や家族の事情が絡むと、答えが変わります。

とくに不動産が絡むと、計算上は贈与が得でも実際には相続が有利になります。ここが最も判断を誤りやすい部分です。

ここでは相続が有利なケース、贈与が有利なケース、不動産で逆転する理由、特例との関係、家族間の争いのリスクを解説します。

相続が有利になるケース

相続で渡したほうがよいのは、税負担が小さいか、相続でしか使えない制度の効果が大きい場合です。

【ケース1】財産が基礎控除以下または少し超える程度

相続税が出ないか少額で収まります。贈与税を払う意味がなく、毎年の手間もかかりません。

【ケース2】自宅の土地を子に引き継がせたい

相続なら小規模宅地等の特例で評価額を最大80%減額できます。生前贈与ではこの特例が使えません。

【ケース3】渡す時間が短い・判断能力に不安がある

贈与は年数をかけてこそ効きます。時間がなければ遺言や生命保険で相続に備えるほうが確実です。

重要ポイント:3つのケースに当てはまるなら、贈与を無理に組み込まないほうが結果的に有利です。相続を軸に準備を進めてください。

贈与が有利になるケース

贈与で渡したほうがよいのは、時間と人数を味方にできる場合、そして財産が増え続ける場合です。

【ケース1】渡す側が若く健康で年数を確保できる

60代から始めれば20年以上かけられます。7年加算の影響を受けない贈与を積み重ねられます。

【ケース2】受け取る人が多い

基礎控除は受け取る人ごとに使えます。子2人と孫3人なら年550万円を非課税で移せます。

【ケース3】家賃収入や値上がりが見込まれる財産がある

持ち続けると財産が増えて相続税も増えます。早く移せば、その後の増加分を切り離せます。

重要ポイント:贈与の効果は「年数×人数×金額」の掛け算で決まります。3つのうち2つ以上を確保できるなら贈与が有力です。

不動産は移転コストで結論が逆転する

不動産を渡す場合は、相続税・贈与税のほかに名義変更のコストがかかります。ここで結論がしばしば逆転します。

登録免許税は、相続なら固定資産税評価額の0.4%ですが、贈与では2%です。さらに贈与では不動産取得税が原則3%かかります

相続で取得した場合、不動産取得税はかかりません。評価額が大きいほど、この差は無視できない金額になります。

費用の種類 相続 贈与
登録免許税 評価額の0.4% 評価額の2%
不動産取得税 かからない 原則3%(土地・住宅)
小規模宅地等の特例 要件を満たせば使える 使えない
評価額3,000万円の負担例 12万円 150万円

表の見方:評価額3,000万円の不動産では、名義変更のコストだけで138万円の差がつきます。贈与税以外の費用も計算に入れてください。

計算ロジック:【前提】固定資産税評価額3,000万円の土地・住宅。相続は3,000万円×0.4%=12万円。贈与は3,000万円×2%+3,000万円×3%=150万円です。司法書士への報酬は別途かかります。

参照元:国税庁 No.7191 登録免許税の税額表

家をもらった場合の贈与税は、下記の記事で解説しています。

土地を贈与する場合の評価額と手続きは、下記の記事で解説しています。

小規模宅地等の特例が使えるかで結論が変わる

自宅の土地については、小規模宅地等の特例の有無で結論が決まります。この特例は相続でしか使えません。

居住用の宅地なら330㎡まで評価額を80%減額できます。事業用は400㎡まで80%、貸付用は200㎡まで50%の減額です。

たとえば評価額5,000万円の自宅の土地なら、特例の適用で1,000万円まで下がります。減額効果は4,000万円にもなります

注意:自宅を生前贈与すると小規模宅地等の特例が使えなくなります。相続時精算課税で贈与した土地も対象外です。

参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例

特例の要件と誰が相続すると得かは、下記の記事で解説しています。

家族が揉めると税の得は消える

贈与は特定の人にだけ財産を渡す行為です。他の相続人から見ると不公平に映ります。

生前に多額の贈与を受けた相続人がいると、遺産分割で特別受益として持ち戻しを求められることがあります。

争いが起きると、遺産分割が長引きます。申告期限までに分割できないと配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も使えません

節税で数百万円を削っても、特例を失えば効果は簡単に吹き飛びます。税額だけで判断しないことが大切です。

次の項目を確認しておくと、争いのリスクを下げられます。

  • □ 誰にいくら贈与したかを記録に残しているか
  • □ 贈与する理由を他の相続人にも説明しているか
  • □ 相続人の間で極端に偏った贈与になっていないか
  • □ 偏りがある場合、遺言で全体の調整を図っているか
  • □ 贈与を受けていない相続人の取り分を確保できているか
  • □ 特別受益の持ち戻しを免除する意思表示をしているか
  • □ 申告期限内に分割できる見通しが立っているか

重要ポイント:見落としやすいのは最後の項目です。分割が終わらないと大きな特例が使えず、税額が跳ね上がります。争いの予防は節税策の一部です。

特別受益の持ち戻しと相続税申告への影響は、下記の記事で解説しています。

【2024年改正】生前贈与加算7年ルールが選び方に与える影響

相続と贈与の選び方は、2024年の改正で大きく変わりました。生前贈与加算の対象期間が延長されたためです。

3年から7年に延びたため、贈与を始める年齢が損得を左右するようになりました

ここでは改正の内容と経過措置、加算の対象になる人、7年以内に相続が起きた場合の損得、否認されるリスクを解説します。

7年に延長された内容と経過措置

生前贈与加算とは、相続人が亡くなる前の一定期間に受けた贈与を、相続財産に加算して相続税を計算する制度です。

2024年1月以降の贈与について、この期間が3年から7年へ段階的に延長されました。完全に7年になるのは2031年1月以降の相続からです。

加算されると、年110万円以下で非課税だった贈与も相続財産に戻されます。延長された4年分の贈与には、総額100万円の控除が用意されています

相続開始の時期 加算される贈与の期間
2026年12月まで 相続開始前3年以内
2027年1月〜2030年12月 2024年1月1日以降の贈与
2031年1月以降 相続開始前7年以内

表の見方:加算期間は段階的に延びます。今から始める贈与ほど、加算の影響を受けやすくなります。

重要ポイント:この改正により、亡くなる直前に慌てて贈与する対策は効かなくなりました。早く始めることが前提条件になります。

参照元:国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

7年加算の対象になる人・ならない人

加算の対象になるのは、相続や遺贈で財産を取得した人への贈与です。相続人と遺言で財産を受け取る人が該当します。

相続で財産を受け取らない孫や子の配偶者への贈与は、原則として加算されません。加算を避けたい場合の有力な選択肢です。

ただし孫でも例外があります。代襲相続人である場合、遺言で財産を受け取る場合、生命保険金の受取人である場合は対象になります。

贈与の相手 7年加算 注意点
配偶者・子(相続人) 対象 加算されるが贈与税額は控除される
遺言で財産を受け取る人 対象 相続人以外でも加算される
財産を相続しない孫 対象外 代襲相続人・保険金受取人だと対象
子の配偶者(相続人でない) 対象外 相続時精算課税は使えない

表の見方:孫や子の配偶者への贈与は加算を避けられます。ただし遺言や生命保険で財産を渡すと対象に変わるため、全体の設計と合わせて考えてください。

孫への贈与で節税する方法と制度の使い分けは、下記の記事で解説しています。

孫が相続人になる場合の2割加算は、下記の記事で解説しています。

7年以内に相続が起きた場合の損得

7年以内に相続が起きても、払った贈与税が無駄になるわけではありません。贈与税額控除があります。

加算された贈与財産に対応する贈与税は、相続税額から差し引かれます。二重課税にはならない仕組みです。

つまり7年以内に相続が起きた場合の結果は、「贈与しなかった場合とほぼ同じ」に戻るだけです。払い損にはなりません。

相続までの期間 贈与の効果 払った贈与税の扱い
7年を超えた 効果が確定する そのまま負担
7年以内だった 加算で効果が消える 相続税額から控除される

重要ポイント:7年以内に相続が起きても大きな損はしません。「加算されるかもしれないから贈与しない」という判断は不利になりがちです

計算ロジック:【前提】加算対象となった贈与について、その年に納めた贈与税を相続税額から控除します。控除しきれない金額があっても、暦年課税では還付されない点に注意が必要です。

7年加算の後も贈与を効かせる方法は、下記の記事で解説しています。

名義預金・定期贈与と判定されると台無しになる

分岐点まで計算して贈与しても、贈与そのものが否認されれば意味がありません。

子や孫の名義の口座でも、実態として親が管理していれば名義預金と判定されます。この場合、贈与は成立していなかったことになります。

毎年同じ額を同じ時期に渡し続けると、定期贈与と判定されるおそれもあります。全期間分をまとめて贈与したものとして、一度に高い税率で課税されます

贈与が否認される典型パターン

  • 通帳・印鑑・カードを渡す側が管理し続けている
  • 受け取る側が贈与を受けたことを知らない
  • 贈与契約書がなく、口頭の約束だけで済ませている
  • 現金を手渡しし、資金移動の記録が残っていない
  • 毎年まったく同じ金額を同じ日に渡している

否認を避けるには、贈与のつど契約書を交わし、銀行振込で記録を残し、通帳と印鑑を受け取る側が管理することが必要です。

重要ポイント:金額と時期を毎年少しずつ変えるだけでも、定期贈与と見られるリスクは下がります。記録を残すことが最大の防御です

名義預金と判定された場合の影響は、下記の記事で解説しています。

相続と贈与を組み合わせる考え方

相続と贈与は、どちらか一方を選ぶものではありません。組み合わせるのが実際には最も効果的です。

現金は贈与で減らし、特例が使える自宅は相続で引き継ぐのが基本形です。財産ごとに渡し方を分けます。

ここでは組み合わせの基本、財産の種類による使い分け、制度の併用、そして具体的なモデルケースを解説します。

基本は「贈与で減らし、残りを相続」

相続税がかかる家庭では、生前に贈与で財産を減らし、残りを相続で引き継ぐのが基本の組み合わせです。

贈与で課税対象の財産を減らせば、相続税の税率帯そのものが下がることもあります。単に金額が減るだけではありません。

ただし減らしすぎると老後資金が不足します。生活に必要な資金を確保したうえで、残る分を贈与の対象にしてください

重要ポイント:贈与を進めると財産額が下がり、最も得な贈与額も下がります。数年ごとに再計算して金額を調整するのが正しい運用です。

財産の種類で使い分ける

財産の種類ごとに、向いている渡し方が違います。使い分けの軸は2つです。

1つ目は「相続でしか使えない特例が効くか」、2つ目は「時間の経過で価値が変わるか」です。この2軸で仕分けます。

財産の種類 向いている渡し方 理由
現金・預金 贈与(毎年分けて渡す) 金額を自由に刻めて分岐点に合わせやすい
自宅の土地 相続 小規模宅地等の特例で最大80%減額できる
賃貸物件 贈与(早めに移す) その後の家賃収入を相続財産から外せる
値上がりが見込まれる自社株 贈与(相続時精算課税) 贈与時の低い評価額で固定できる
値動きが読めない上場株式 相続 贈与時の評価で固定すると下落時に不利

表の見方:同じ「株式」でも、値上がりが見込めるかどうかで渡し方が逆になります。相続時精算課税は評価額を固定する制度なので、下落すると不利に働きます

贈与者ごとに暦年課税と相続時精算課税を併用する

暦年課税と相続時精算課税は、同じ贈与者からの贈与では併用できません。一度精算課税を選ぶと暦年課税に戻せません。

ただし贈与者が違えば、贈与を受ける人が同じでも制度を使い分けられます。ここが見落とされやすい点です。

たとえば父からは相続時精算課税で賃貸物件を贈与し、母からは暦年課税で毎年現金を贈与するという組み合わせが可能です。

精算課税には年110万円の基礎控除が新設され、この部分は相続財産に加算されません。7年加算を避けたい場合の選択肢になります。

注意:相続時精算課税を選ぶと、その贈与者からの贈与は暦年課税に戻せません。小規模宅地等の特例も使えなくなります

参照元:国税庁 No.4409 贈与税の計算(相続時精算課税の選択をした場合)

相続時精算課税を使うべきケースは、下記の記事で解説しています。

目的別の非課税制度と期限は、下記の記事で解説しています。

組み合わせの実例|財産2億円のモデルケース

財産2億円・配偶者と子2人の家庭で、時期ごとの動きを追ってみましょう。合計相続税割合は10.6%です。

60代〜
子2人へ1人年510万円の暦年贈与を開始する。贈与税は1人50万円で、その年の得は104万円。贈与のつど契約書を作り振込で記録を残す

数年ごと
財産額を再計算し、贈与額を見直す。財産が減れば合計相続税割合も下がるため、最も得な贈与額も下がる

70代〜
現金1,500万円を生命保険に換え、「500万円×法定相続人3人」の非課税枠を確保する。贈与と違い加算のリスクがない

相続発生時
自宅の土地は同居する子が相続し、小規模宅地等の特例で評価額を80%減額する。二次相続の負担も見据えて分割する

重要ポイント:この流れの要点は、「贈与額を分岐点に合わせる」「数年ごとに見直す」「自宅は相続に残す」の3つです。順番を守ることが効果を決めます。

相続と贈与の選択は相続税の対応実績がある税理士へ|一括相談・見積り

相続と贈与の選択には、一度実行すると戻せないものがあります。相続税の対応実績がある税理士なら、二次相続まで含めたトータルの税額を試算して最適な贈与額を示せます。複数の税理士に一括で相談し、提案内容を比較して選ぶのが確実です。

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

この判断には相続税の見通しが欠かせません。贈与税だけを見て選ぶと、相続のときに数百万円の差が出ます

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

  • 一次相続と二次相続を通算した合計相続税を試算できる
  • 財産額と家族構成から最も得な年間贈与額を計算できる
  • 小規模宅地等の特例など相続でしか使えない制度の影響を数値で示せる
  • 暦年課税と相続時精算課税のどちらを選ぶかを設計できる
  • 不動産の登録免許税・不動産取得税まで含めたコストを比較できる
  • 財産が変動した場合の再計算まで継続して見てもらえる

たとえば財産2億円の家庭で、年110万円の贈与を提案する税理士と年510万円を提案する税理士では、その年の得が44万円と104万円に分かれます。

10年続ければ600万円規模の差になります。提案の質だけでこれだけの開きが出ます。

税理士を比較するときの3つの判定ポイント

相続税に対応している税理士でも、生前対策の設計力には差があります。見積りや初回相談で次の3点を比べてください。

「分岐点を数字で言えるか・二次相続まで通算するか・不動産のコストを入れるか」の3点で見分けられます

判定ポイント1:最も得な贈与額を数字で示せるか
「年110万円が基本です」で終わるか、「あなたの場合は1人年◯◯万円まで」と金額で答えるかを見ます。→ 金額で答えられる税理士のほうが、実際に試算していると判定できます。

判定ポイント2:二次相続まで通算して試算するか
一次相続の税額だけを示すか、配偶者が亡くなったときの二次相続まで合算するかを確認します。→ 通算する税理士のほうが、家族全体で損しない案を出せると判定できます。

判定ポイント3:不動産のコストと特例を比較に入れるか
登録免許税・不動産取得税と、小規模宅地等の特例の減額効果を並べて示すかを見ます。→ 両方を入れる税理士のほうが、逆転を見抜けると判定できます。

相談しないまま進めるリスク

自己判断で進めると、取り返しがつかないことがあります。とくに自宅を生前贈与すると、小規模宅地等の特例を失って数百万円の損失になります

贈与は成立すると原則として撤回できません。具体的には次のようなリスクがあります。

相談せずに進めた場合のリスク

  • 自宅を生前贈与し、小規模宅地等の特例(最大80%減額)を失う
  • 相続税がかからない家庭なのに贈与税を払ってしまう
  • 年110万円に絞りすぎて、削れるはずの相続税を取りこぼす
  • 贈与契約書や振込記録がなく、名義預金として否認される
  • 高齢になってから始めて7年加算で効果が消える
  • 相続時精算課税を選んだ後に暦年課税へ戻せないと気づく

これらの多くは、実行前の試算で防げます。相談は無料のことが多く、動くなら早いほど選択肢が広がります。

一括相談・見積りの手順|STEP1〜STEP4

実際に一括相談・見積りを利用する流れは次の4ステップです。フォームの記入自体は5分ほどで終わります。

贈与は早く始めるほど有利です。判断に迷っている段階で相談してください

STEP1
財産と家族構成を整理する。財産の種類と概算額・渡したい相手と人数・年齢・希望する時期をまとめる

STEP2
一括見積り・相談サービスに依頼する。相続と贈与の比較・生前対策などの希望内容を明記し、相続税の対応実績がある税理士3〜5社へ同時に打診する。不動産があれば所在地と広さも伝える。財産の種類や相続人の人数はできるだけ正確に記入する(記入は5分程度)

STEP3
各税理士から「提案内容」「試算した相続税額と贈与税額」「報酬額」が記載された見積りが届く。相続のみと贈与併用の比較を出してもらい、気になる事務所と初回相談を行う

STEP4
「提案内容の質」「説明の丁寧さ」「報酬の納得性」で最適な事務所を選び、正式に依頼する。贈与を実行する前に方針を固める

重要ポイント:「相続で渡した場合」と「贈与を併用した場合」の両方を試算してもらってください。片方だけを見て決めると、家族全体では損をすることがあります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 相続と贈与はどちらが得ですか?

財産額で決まります。相続で渡した場合の税負担の割合を下回る割合で贈与できるなら、贈与が得です。財産2億円で配偶者と子2人なら、相続の負担割合は10.6%で、1人年510万円までの贈与が最も得になります。財産が基礎控除以下なら相続が得です。

Q2. 年間いくらまで贈与すれば得になりますか?

年110万円は「贈与税がかからない上限」であって、最も得な金額ではありません。配偶者と子2人なら、財産1億円で1人年310万円、2億円で510万円、3億円で800万円が目安です。それぞれ680万円・1,170万円・2,020万円を超えると損に転じます。

Q3. 相続税がかからない場合でも贈与したほうがよいですか?

節税目的なら贈与しないほうがよいです。相続税が出ないのに贈与税を払うと、その分がまるごと余分な負担になります。ただし年110万円以下なら贈与税はかからないため、資金援助や争いの予防が目的なら贈与する意味があります。

Q4. 不動産は贈与と相続のどちらで渡すべきですか?

自宅の土地は相続で引き継ぐほうが有利なことが多いです。相続なら小規模宅地等の特例で評価額を最大80%減額できますが、生前贈与では使えません。さらに贈与では登録免許税が2%、不動産取得税が原則3%かかり、相続との差は評価額3,000万円で138万円になります。

Q5. 生前贈与加算の7年ルールがあると贈与は無意味ですか?

無意味ではありません。加算されても、払った贈与税は相続税額から控除されるため、贈与しなかった場合とほぼ同じ結果に戻るだけです。また相続で財産を受け取らない孫や子の配偶者への贈与は、原則として加算されません。早く始めるほど加算されない贈与が増えます。

まとめ|相続と贈与は財産額で分岐点が決まる

判定の考え方

  • 相続と贈与の損得は税率表では決まらず、実際に払う金額の割合で比べる
  • 相続で渡した場合の負担割合は一次相続と二次相続を通算して見る
  • その割合を下回る実効税率で贈与できるなら、贈与したほうが得になる
  • 財産が基礎控除以下なら相続税が出ないため、贈与は純損失になる

財産額別の目安(配偶者と子2人)

  • 財産1億円なら1人年310万円が最も得で、680万円を超えると損に転じる
  • 財産2億円なら1人年510万円が最も得で、その年の得は104万円
  • 財産3億円なら1人年800万円が最も得で、その年の得は286万円
  • 財産5,000万〜8,000万円なら年110万円の非課税枠に収めるのが正解

選ぶときの注意点

  • 自宅の土地は小規模宅地等の特例が使える相続で引き継ぐのが基本
  • 不動産の贈与は登録免許税と不動産取得税で結論が逆転しやすい
  • 2024年改正で生前贈与加算が7年に延長された(2031年に完全移行)
  • 名義預金・定期贈与と判定されると、計算した効果がすべて消える

今すぐ取るべき行動

  • 財産の合計額を出し、基礎控除を超えるかどうかを確認する
  • 超える場合は、財産額に対応する最も得な年間贈与額を把握する
  • 贈与を始めるなら7年加算を踏まえ、元気なうちに開始する
  • 実行前に、複数の税理士へ一括相談・見積りを依頼して提案内容を比較する

※本記事は2026年8月時点の法令・税率に基づいて作成しています。相続税法・贈与税の改正により取り扱いが変わる場合があります。最新の制度や個別の判断については、国税庁の情報や相続税の対応実績がある税理士に必ずご確認ください。

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