


相続で税理士に相談しようと思ったとき、まず迷うのが「これは税理士に頼めるのか」という点です。相続税の申告は税理士でよいとして、名義変更や遺産分割の話し合いはどうなのかが分かりません。
調べても「弁護士の業務とされていることが多いです」といった曖昧な説明が並び、判断がつかないまま相談先を選ぶことになります。
境界は感覚ではなく法律で決まっています。税理士法2条が税理士の独占業務を3つ定め、52条が税理士でない者の税理士業務を禁じています。
違反すると2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。逆に税理士が他士業の領域に入れない根拠も、弁護士法72条と司法書士法3条にあります。
この線を知っておくと、相談先を1回で決められます。「税金の話かどうか」が判断の軸になるからです。判断が割れやすいのは遺産分割協議書の作成で、解説サイトの説明も食い違っています。本記事では条文に戻って線を引きます。
この記事では、税理士に相談できること8つとできないこと6つ、その根拠となる条文、判断が割れる3つのグレーゾーン、相談で聞かれることまでを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

まず全体像を対で示します。できることだけを並べた解説が多いため、できないことと並べて見ると境界がはっきりします。
結論から言えば、税理士に頼めるのは「税金の計算と申告に関わること」です。財産の名義を動かす手続きや、相続人どうしの利害を調整する交渉は含まれません。
税理士に頼める業務を一覧にしました。上の3つは税理士だけができる独占業務です。
| 相談できること | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 相続税の申告書の作成・提出 | 申告書一式の作成と税務署への提出 | 独占業務 |
| 税額の計算・特例の適用判定 | 小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減が使えるかの判断 | 独占業務 |
| 個別の税務相談 | 「うちの場合いくらか」への回答 | 独占業務 |
| 財産の評価 | 土地・非上場株式の相続税評価額の算定 | 付随業務 |
| 準確定申告・贈与税申告 | 被相続人の所得税(期限4か月)と生前贈与の申告 | 独占業務 |
| 税務調査の立会い・対応 | 代理人として調査に同席し、税務署と交渉 | 独占業務(税務代理) |
| 生前対策の提案 | 贈与・生命保険・不動産を使った税負担の設計 | 付随業務 |
| 申告書の添付書類としての遺産分割協議書の作成 | 申告に必要な範囲での書類作成 | 付随業務(要注意) |
表の見方:上3行が税理士法2条の独占業務で、税理士以外は無償であっても行えません。残りは独占業務に付随する形で引き受けられる業務です。
重要ポイント:最下行の遺産分割協議書だけは条件つきです。申告の添付書類として作る場合に限られ、相続人どうしの分け方を調整する行為は含まれません。この点は後で詳しく扱います。
次に、税理士には頼めない業務です。いずれも別の士業の領域になります。
| 相談できないこと | 根拠 | 依頼先 |
|---|---|---|
| 相続登記(不動産の名義変更) | 司法書士法3条 | 司法書士 |
| 遺産分割の代理交渉・調停 | 弁護士法72条 | 弁護士 |
| 相続放棄の申述の代理 | 弁護士法72条 | 弁護士(代理)/司法書士(書類作成) |
| 遺言の執行 | 民法上の遺言執行者の職務 | 弁護士・司法書士・信託銀行 |
| 不動産の売却仲介 | 宅地建物取引業法 | 宅地建物取引業者 |
| 相続人どうしの争いの解決 | 弁護士法72条 | 弁護士 |
表の見方:6つのうち3つが弁護士法72条を根拠にしています。「相続人どうしの利害が対立する場面」はすべて弁護士の領域だと考えてください。
重要ポイント:相続登記は2024年4月から義務化され、相続を知った日から3年以内の申請が必要です。税理士に相続税申告を頼んでも登記は別途、司法書士に依頼することになります。
どの専門家に何を相談すべきかは、下記の記事で解説しています。

相続で関わる士業は4者です。どこまでが誰の領域かを、根拠法と一緒に整理しました。相談先を選ぶときの地図として使ってください。
| 業務 | 税理士 | 司法書士 | 弁護士 | 行政書士 |
|---|---|---|---|---|
| 相続税の申告・税務相談 | ○ | × | △(税理士登録が必要) | × |
| 財産の相続税評価 | ○ | × | × | × |
| 税務調査の立会い | ○ | × | △(税理士登録が必要) | × |
| 相続登記 | × | ○ | ○(実務では少ない) | × |
| 遺産分割協議書の作成 | △(申告の添付書類として) | ○(登記に必要な範囲) | ○ | ○(争いがない場合) |
| 分割の代理交渉・調停 | × | × | ○ | × |
| 相続放棄の申述 | × | △(書類作成のみ) | ○ | × |
| 戸籍の収集 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 預貯金の解約・名義変更 | △(事実行為として) | ○ | ○ | ○ |
| 根拠法 | 税理士法2条 | 司法書士法3条 | 弁護士法3条・72条 | 行政書士法1条の2 |
表の見方:縦に見ると、○が1つしかない行が独占業務です。相続税の申告と財産評価は税理士だけ、相続登記は司法書士だけ、代理交渉は弁護士だけです。
重要ポイント:△が付く行が判断の分かれ目です。遺産分割協議書は4者すべてに△か○が付きますが、それぞれ関われる範囲が違います。争いがあるなら弁護士だけです。
計算ロジック:弁護士の税務業務に△を付けているのは、弁護士法3条2項により弁護士は税理士業務を行えるものの、税理士名簿への登録または国税局長への通知が必要なためです。実務では相続税申告を扱う弁護士は多くありません。
自分の状況に近い行を見てください。最初の1軒を間違えなければ、無駄な往復が発生しません。
| 状況 | 最初に行く先 | 理由 |
|---|---|---|
| 財産が基礎控除を超えそう・もめていない | 税理士 | 税額が分割の判断材料になる |
| 財産が基礎控除以下・不動産がある | 司法書士 | 申告は不要。登記だけが必要 |
| 相続人の間で対立がある | 弁護士 | 分割が決まらないと申告も進まない |
| 借金がありそう・放棄を検討 | 弁護士・司法書士 | 3か月の期限が最も早く来る |
| まだ相続は起きていない | 税理士 | 選択肢が最も多い段階 |
| 申告済みだが税額に疑問がある | 税理士(別の事務所) | 更正の請求は原則5年以内 |
表の見方:期限が早い順に優先してください。相続放棄の3か月が最も早く、次に準確定申告の4か月、相続税の10か月と続きます。
重要ポイント:基礎控除以下でも、特例を使って0円になる場合は申告が必要です。2行目に当てはまるかは、特例を使う前の金額で判定してください。
2つの表を見比べると規則性が見えます。税額の計算に関わることは税理士、財産を動かす手続きと人と人の調整は他士業です。迷ったときは「この相談は最終的に税額の話に着地するか」を考えてください。着地するなら税理士、しないなら別の専門家です。
たとえば「この土地を長男が相続すると相続税はいくらか」は税理士です。一方「長男に相続させたいが次男が反対している」は弁護士になります。同じ土地の話でも、聞きたいことが税額なのか合意形成なのかで相手が変わります。
実際の相談内容を3段階で振り分けてください。
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重要ポイント:STEP1で対立がなく、STEP3で申告が必要なら税理士から始めるのが効率的です。登記や書類収集は提携先を紹介してもらえます。

「〜は弁護士の業務とされていることが多いです」という説明をよく見かけますが、根拠まで示した解説はほとんどありません。境界は慣習ではなく法律で決まっており、違反には罰則があります。ここを知ると判断が揺れなくなります。
ここでは条文の原文で、税理士ができることとできないことの根拠を確認します。
税理士の業務は税理士法2条に列挙されています。
税理士法2条:税理士は、他人の求めに応じ、租税に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。一 税務代理/二 税務書類の作成/三 税務相談
この3つが独占業務です。税務相談が含まれている点が重要で、「うちの場合いくらか」に答えられるのは税理士だけです。税務代理は申告や税務調査の場で本人に代わって主張することを指します。税務書類の作成は申告書そのものを作る行為です。
相続税の申告書を作れるのが税理士だけなのは、この2号があるためです。
参照元:e-Gov 法令検索(税理士法 昭和二十六年法律第二百三十七号)
2条で定めた業務を、税理士以外がやってはいけないと定めているのが52条です。
税理士法52条:税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。
条文に「報酬を得る目的で」という限定がない点に注目してください。無償であっても、業として行えば違反になります。
相続コンサルタントや不動産会社が「あなたの相続税はこれくらいです」と個別の金額を答えるのは、この52条に触れる可能性があります。
参照元:e-Gov 法令検索(税理士法 昭和二十六年法律第二百三十七号)
52条に違反した場合の罰則は59条に定められています。
税理士法59条1項:次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした者は、二年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。……四 第五十二条の規定に違反したとき。
刑事罰が用意されているほど厳格に線が引かれています。単なる業界の慣習ではありません。
なお条文は「懲役」ではなく「拘禁刑」です。2025年6月施行の刑法改正で懲役と禁錮が拘禁刑に一本化されました。古い解説では「2年以下の懲役」と書かれていることがあります。
注意:罰則の対象は相談を受けた側ですが、損をするのは誤った答えを信じて申告した相談者です。誤りがあっても加算税を負担するのは納税者本人になります。
参照元:e-Gov 法令検索(税理士法 昭和二十六年法律第二百三十七号)
線は税理士を守るためだけにあるのではありません。税理士側にも制約があります。
弁護士法72条:弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件…その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。
要件は「報酬を得る目的」と「一般の法律事件」の2つです。相続人どうしで争いがある状態は「法律事件」に当たり、税理士は代理も和解の仲介もできません。
登記については司法書士法3条が「登記又は供託に関する手続について代理すること」を司法書士の業務としています。税理士が相続登記を代理すれば、この規定に反することになります。
参照元:e-Gov 法令検索(弁護士法 昭和二十四年法律第二百五号)
ここまでを実務に落とすと、次のことが言えます。税務署は税理士業務を行う立場ではないため、個別の有利不利は答えません。「この土地にどの補正を使うか」「どの宅地に特例を使うと得か」には回答が得られません。
金融機関や不動産会社の担当者も、個別の税額計算には踏み込めません。一般論としての説明にとどまります。逆に、相続人どうしの調整を税理士に期待しても動けません。この場合は最初から弁護士に行くほうが早く進みます。
税理士の無料相談を含む7つの窓口の使い分けは、下記の記事で解説しています。


ここからは8つの業務を1つずつ見ます。同じ「相続税の相談」でも、どの段階で何を頼むかで得られるものが変わります。依頼できる時期も業務ごとに違うため、あわせて確認してください。
最も中心にある業務です。申告書は第1表から第15表まであり、財産の種類ごとに使う表が変わります。税理士に依頼すると、作成から税務署への提出までを任せられます。税理士法2条2号の税務書類の作成に当たるため、税理士以外は代行できません。
申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月です。延長は原則できません。
相続税は財産の評価額をもとに計算します。この評価が税理士によって差が出る領域です。土地は路線価に地積を掛けるだけでは終わりません。形状や接道の状況に応じて不整形地補正や間口狭小補正を適用します。
補正を使わずに評価すると、必ず評価額が高く出ます。税務署は「高すぎます」と教えてくれません。非上場株式も同様で、会社の規模判定から始めて類似業種比準方式か純資産価額方式かを選びます。決算書3期分を読む作業になります。
申告の前に、いくらかかるかを知りたい段階の相談です。財産の概算と家族構成が分かれば試算できます。分け方を変えたときの税額の違いも比較できます。誰がどの財産を取得するかで、使える特例と税額が変わるためです。
複数の分割案を試算してから遺産分割協議に入るのが本来の順序です。決めてから相談すると、有利な選択肢を逃します。
相続税には評価額や税額を下げる制度が複数あります。適用できるかの判断が税理士の中心的な仕事です。小規模宅地等の特例は330㎡まで評価額を80%減額できますが、4つの類型があり要件がそれぞれ異なります。
特定居住用宅地等だけでも、配偶者が取得する場合・同居していた親族が取得する場合・いわゆる家なき子が取得する場合で条件が変わります。同居の実態があったかどうかの判断は、書類だけでは決まりません。ここが個別の税務相談に当たる部分です。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
小規模宅地等の特例の4類型と要件は、下記の記事で解説しています。

相続税以外の申告も税理士の業務です。見落とされやすいのが準確定申告になります。被相続人の1月1日から死亡日までの所得を、相続人が代わりに申告する手続きです。期限は相続開始を知った日の翌日から4か月で、相続税の10か月より先に来ます。
被相続人が事業をしていた場合や不動産を貸していた場合、年金収入が400万円を超える場合は必要になります。生前贈与があった場合の贈与税申告も同様に依頼できます。相続開始前7年以内の贈与は相続税の計算に加算されるため、確認が必要です。
参照元:国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
申告後に税務調査の連絡が来た場合、税理士は代理人として対応できます。税理士法2条1号の税務代理に当たる業務です。事前準備から当日の立会い、調査後の税務署とのやり取りまで任せられます。
自分で申告した場合、調査の対応も自分で行うことになります。申告内容を作った本人でない税理士に後から頼んでも、対応には限界があります。調査は通常2日間で、被相続人の生前の生活状況から預金の動きまで質問されます。
相続が起きる前の相談も税理士の業務です。むしろ選択肢が多いのはこの段階になります。贈与・生命保険の非課税枠・不動産の活用などを組み合わせて、将来の税負担を設計します。
相続が起きてからできる対策は限られます。分け方の工夫と特例の適用がほぼすべてです。ただし遺言書の作成そのものは、法的な有効性の確保という点で弁護士や公証人が関わる領域になります。税理士は税額の観点から内容に助言する形です。
いつ頼めるかを整理しました。相談の時期によって選べる業務が変わります。
| 業務 | 相続前 | 相続後〜申告前 | 申告後 |
|---|---|---|---|
| 相続税の申告書の作成・提出 | − | ○ | − |
| 財産の評価 | ○(試算目的) | ○ | ○(見直し) |
| 税額の試算 | ○ | ○ | − |
| 特例・控除の適用判定 | ○(事前確認) | ○ | △(更正の請求) |
| 準確定申告・贈与税申告 | ○(贈与税) | ○(準確定・4か月) | − |
| 税務調査の立会い | − | − | ○ |
| 生前対策の提案 | ○ | − | − |
| 申告書の添付書類の作成 | − | ○ | − |
表の見方:相続前に頼めるのは試算と生前対策です。相続が起きた後は申告関連に集中し、選べる打ち手が減ります。
重要ポイント:申告後に頼めるのは税務調査の対応と更正の請求です。払いすぎに気づいた場合の更正の請求は原則5年以内で、期限を過ぎると取り戻せません。
申告までの全体の流れは、下記の記事で解説しています。


できること・できないことの線引きには、判断が割れる領域があります。解説サイトによって説明が食い違っているのが遺産分割協議書の作成です。ここを条文に戻して整理します。
グレーゾーンは3つあり、いずれも「どこまでなら税理士か」の境界にあります。
最も誤解が多い論点です。解説サイトの説明は3通りに割れています。
| 説明のパターン | 内容 | 評価 |
|---|---|---|
| 制限なし説 | 税理士・司法書士・行政書士が作成できる | 不正確 |
| 申告添付書類に限る説 | 相続税申告の添付書類として作る場合のみ | 条文に整合 |
| 提出不要なら不可説 | 税務署への提出が不要なケースでは依頼できない | 上と同趣旨 |
表の見方:2行目と3行目は同じことを別の角度から言っています。1行目の「制限なし」は、税理士業務との関係を無視した説明です。
整理すると次のようになります。相続税の申告書には遺産分割協議書の写しを添付します。この添付書類を作る行為は、申告書の作成に付随する業務です。
一方、相続人どうしで誰が何を取得するかを調整する行為は、弁護士法72条の「一般の法律事件に関する法律事務」に当たります。合意ができている内容を書面にするのは可、合意そのものを作りにいくのは不可という線です。
重要ポイント:相続税の申告が不要な相続で協議書だけを作りたい場合は、行政書士または司法書士が対応します。税理士業務に付随しないためです。
分け方について税理士に相談したい場面は多くあります。ここにも線があります。税額のシミュレーションを提示することは税務相談の範囲です。「配偶者が7割取得した場合と5割の場合で、一次と二次を合わせた税額はこう変わります」は問題ありません。
一方、相続人の一方に立って他方を説得する行為は代理・仲裁に当たります。税理士は中立の立場でしか関われません。実務では、税理士が全員に同じ試算結果を示し、それを見て相続人が判断する形になります。
注意:相続人の一部だけから依頼を受けて他の相続人と交渉してほしいという依頼は、税理士は受けられません。この段階に来ているなら弁護士です。
金融機関の相続手続きを代行してもらえるかという相談も多くあります。この手続きは登記のような士業の独占業務ではなく、事実行為の代行に当たります。そのため税理士事務所がサービスとして提供している場合があります。
ただし対応は事務所によって分かれます。相続税申告の報酬とは別に、相続手続きの代行費用がかかるのが一般的です。提携する司法書士や行政書士が担当するケースもあります。依頼前に、誰がどこまで対応するかを確認してください。
3つを一覧で整理しました。
| 相談内容 | 税理士に頼めるか | 境界 |
|---|---|---|
| 合意済みの内容で遺産分割協議書を作る | ○ | 申告の添付書類として作る場合 |
| 分け方の合意を取りまとめてもらう | × | 弁護士法72条の法律事務 |
| 分割案ごとの税額を試算してもらう | ○ | 税務相談の範囲 |
| 一方の代理人として交渉してもらう | × | 代理・仲裁に当たる |
| 預金の解約・名義変更の代行 | △ | 事実行為。事務所により対応が分かれる |
| 相続税申告が不要な相続の協議書作成 | × | 行政書士・司法書士の領域 |
表の見方:×が付く2行に共通するのは「相続人どうしの利害が対立している」点です。対立が入った瞬間に弁護士の領域になります。
重要ポイント:判定の基準は「合意ができているか」です。できている合意を書面化するのは可、合意を作る作業は不可と覚えてください。
計算ロジック:この判定は税理士法2条(独占業務の範囲)と弁護士法72条(報酬を得る目的で一般の法律事件に関する法律事務を扱えない)を突き合わせたものです。条文上、税理士業務に付随する範囲の書類作成は認められますが、法律事件の処理は含まれません。
グレーゾーンで迷う場面の多くは、実は相続人どうしの関係に起因します。全員が納得していれば、書面化も試算も税理士で完結します。誰かが不満を持っている状態だと、どの作業も途中で止まります。
対立が表面化しているなら、最初から弁護士に相談したほうが結果的に早く済みます。申告期限は10か月で止まりません。協議が長引くと未分割のまま申告することになり、小規模宅地等の特例も配偶者の税額軽減も使えなくなります。
特別受益がある場合の調整は、下記の記事で解説しています。


頼めない業務には、それぞれ担当する士業がいます。相続税申告を税理士に頼んでも、これらは別途どこかに依頼することになります。費用の総額を見積もるうえでも、最初に把握しておくべき部分です。
不動産を相続したら、登記名義を被相続人から相続人へ変更します。担当は司法書士です。根拠は司法書士法3条1号の「登記又は供託に関する手続について代理すること」です。税理士は代理できません。
2024年4月から相続登記は義務化され、相続を知った日から3年以内の申請が必要になりました。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。
費用は登録免許税が固定資産税評価額の0.4%、司法書士報酬が5万〜10万円程度が目安になります。
参照元:法務省 所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し
相続人どうしで話がまとまらない場合の交渉や、家庭裁判所での調停は弁護士の領域です。弁護士法72条が、報酬を得る目的で一般の法律事件に関する代理や和解を業として行うことを弁護士以外に禁じています。
税理士が一方の相続人の代理人として他方と交渉することはできません。中立の立場で試算を示すところまでです。
相続放棄は家庭裁判所への申述が必要です。期限は相続開始を知った日から3か月以内になります。代理人として手続きできるのは弁護士です。司法書士は裁判所提出書類の作成という形で関与できますが、代理権はありません。
3か月の期限は相続税の10か月より先に来ます。借金がある可能性があるなら、まずここを確認してください。
遺言書の内容を実現する遺言執行者の職務は、税理士の業務ではありません。遺言執行者には弁護士・司法書士・信託銀行が就くのが一般的です。相続人自身が就くこともできます。
遺言書の作成についても、法的な有効性の確保という点では弁護士や公証人が関わります。税理士が関われるのは、税額の観点から内容に助言する部分です。
相続した不動産を売る場合、仲介は宅地建物取引業者の業務です。宅地建物取引業法で免許が必要とされています。
税理士ができるのは、売却した場合の譲渡所得税の試算と申告です。売却のタイミングによって税額が変わるため、売る前に相談する価値はあります。
相続税の取得費加算の特例は、相続開始の翌日から3年10か月以内の売却が要件です。この期限を過ぎると使えません。
遺留分の請求、遺言の有効性を争う、使い込みの返還を求めるといった場面はすべて弁護士です。これらは法律事件そのものであり、税理士が関与できる余地がありません。
争いがある状態で税理士に相談しても、できるのは税額の説明までです。解決には至りません。
誰にいくらで頼むかを一覧にしました。
| 業務 | 根拠法 | 依頼先 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
| 相続登記 | 司法書士法3条 | 司法書士 | 報酬5〜10万円+登録免許税0.4% |
| 遺産分割の代理交渉・調停 | 弁護士法72条 | 弁護士 | 着手金20〜50万円+報酬 |
| 相続放棄の申述 | 弁護士法72条 | 弁護士/司法書士 | 3万〜10万円程度 |
| 遺言の執行 | 民法 | 弁護士・司法書士・信託銀行 | 遺産総額の1〜3% |
| 不動産の売却仲介 | 宅地建物取引業法 | 宅地建物取引業者 | 売却価格の3%+6万円が上限 |
| 相続人どうしの争いの解決 | 弁護士法72条 | 弁護士 | 事案により大きく変動 |
表の見方:不動産を相続するなら、相続税の税理士費用に加えて登記費用が必ずかかります。評価額3,000万円の物件なら登録免許税だけで12万円です。
重要ポイント:費用は目安であり、事務所によって幅があります。税理士に依頼するとき、提携先の司法書士の費用も一緒に見積もってもらえるか聞いてください。
依頼するタイミングと期限の逆算は、下記の記事で解説しています。


相談先を選ぶ前に、自分が何を聞きたいのかを整理してください。相談内容が複数にまたがる場合、どこから始めるかで手戻りの量が変わります。
相続の悩みは大きく3種類に分かれます。それぞれ担当が違います。
【1】税金の話
相続税はかかるか、いくらか、特例は使えるか、どう分けると安いか。担当は税理士です。
【2】手続きの話
不動産の名義変更、預金の解約、戸籍の収集。担当は司法書士です。
【3】もめごとの話
分け方で対立している、遺留分を請求したい、遺言に納得がいかない。担当は弁護士です。
自分の悩みがどれに当たるかを決めてから相談先を選ぶと、1回で答えが得られます。逆に決めずに行くと、担当外だと言われて出直しになります。
相続税がかかるかどうかが主な関心なら、税理士に直接行くのが最短です。税務署は申告書の書き方は教えますが、個別の有利不利は答えません。「この土地に特例が使えるか」は税務相談に当たり、税理士の独占業務だからです。
初回相談を無料にしている事務所が多く、この段階で費用はかかりません。
相続では3種類すべてが必要になることも珍しくありません。この場合の順序があります。もめていないなら、税理士から始めるのが効率的です。申告の要否と税額が分かれば、分け方の判断材料がそろいます。
登記や書類収集は、税理士の提携先を紹介してもらえるのが一般的です。自分で探す手間が省けます。もめているなら順序が逆になります。まず弁護士に行き、分割が固まってから税理士に申告を依頼する流れです。
事務所によって、他士業との連携体制が大きく違います。依頼前に確認してください。司法書士や弁護士と提携している事務所なら、窓口を1つにしたまま登記まで進められます。
提携がない事務所だと、登記は自分で司法書士を探すことになります。同じ資料を2回説明する手間が発生します。
重要ポイント:初回相談で「登記も含めてお願いできますか」と聞いてください。紹介の有無と、紹介料が上乗せされるかまで確認するのが実務的です。
税理士の選び方の判定軸は、下記の記事で解説しています。


初回相談では税理士から質問を受けます。何を聞かれるか知らないと、その場で答えられず話が止まります。聞かれることは4つに分類でき、事前に整理しておけば同じ時間で得られる答えの量が変わります。
分からない項目があっても相談はできます。答え方だけ知っておいてください。
最初に聞かれるのは被相続人の基本情報です。申告期限の起算点と課税の範囲が決まります。具体的には、いつ亡くなったか、職業は何だったか、生前に事業や不動産賃貸をしていたかを聞かれます。
事業や不動産賃貸があると準確定申告が必要になり、期限4か月が先に来ます。ここで判明します。生前の資金移動についても質問されます。名義預金や生前贈与の有無を確認するためです。
次に財産の内容です。ここが試算の基礎になります。不動産の所在地と数、預貯金のおおよその残高、生命保険の有無、有価証券、借入金の有無を聞かれます。
正確な金額は不要です。概算で構いませんが、不動産の件数と所在地だけは正確に伝えてください。評価の難易度と費用が変わります。生命保険は受取人固有の財産ですが、相続税では課税対象に含めます。忘れずに伝えてください。
誰が相続人かで基礎控除額が変わるため、必ず聞かれます。配偶者の有無、子の人数、既に亡くなっている相続人がいるか、連絡が取れない人がいるかを確認されます。
基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。人数が1人違うと600万円変わります。同居していた人がいるかも重要です。小規模宅地等の特例の適用判定に直結します。
最後に、どうしたいかを聞かれます。ここが最も曖昧になりやすい部分です。申告だけ頼みたいのか、登記も含めて任せたいのか、節税の提案がほしいのかで見積りが変わります。
急ぐ事情があるかも伝えてください。期限まで残り3か月を切っていると、受けられない事務所や加算報酬が発生する事務所があります。
4分類の質問を一覧にしました。分からない場合の対応も示します。
| 聞かれること | なぜ聞かれるか | 分からないときの答え方 |
|---|---|---|
| いつ亡くなったか | 申告期限の起算点 | 必ず答える(唯一必須) |
| 被相続人の職業・事業の有無 | 準確定申告の要否 | 年金だけか給与かを伝える |
| 不動産の所在地と件数 | 評価の難易度と費用 | 課税明細書を持参すれば足りる |
| 預貯金のおおよその額 | 基礎控除を超えるかの判定 | 「数千万円」程度で可 |
| 生命保険の有無 | 非課税枠の適用 | 証券が見つからなければ「不明」で可 |
| 相続人の人数と続柄 | 基礎控除額の計算 | 戸籍がなくても口頭で可 |
| 同居していた人がいるか | 小規模宅地等の特例の判定 | 住民票の場所と実態を伝える |
| 生前の資金移動 | 名義預金・生前贈与の確認 | 通帳を後日確認する旨を伝える |
| 相続人の間で対立があるか | 依頼を受けられるかの判断 | 正直に伝える |
表の見方:必ず答える必要があるのは死亡日だけです。他は概算や「不明」でも相談は成立します。
重要ポイント:最も曖昧に答えられやすいのが同居の有無です。住民票を移していたかと、実際に住んでいたかは別の話です。両方を正確に伝えてください。
重要ポイント(続き):対立の有無を隠すと、後から依頼を断られることがあります。税理士は一方の代理人になれないためです。最初に伝えておくほうが双方にとって効率的です。
手元にあるものだけで構いません。すべてそろえる必要はありません。
最も重要なのは固定資産税の課税明細書です。不動産評価の出発点になり、これがあれば概算の税額まで出せます。
重要ポイント:課税明細書は毎年4〜6月に市区町村から届きます。実家に届いていないか確認してください。見つからない場合は名寄帳を市区町村で取得できます。
相続税申告に必要な書類の全体像は、下記の記事で解説しています。


初回相談の時間は限られています。4つを事前に調べておくと、同じ時間で得られる答えが具体的になります。いずれも自分で確認できる範囲で、専門知識は要りません。
相続税がかかるかどうかは基礎控除で決まります。計算式は単純です。基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。配偶者と子2人なら4,800万円になります。
財産の合計がこれを下回るなら、原則として申告は不要です。ただし特例を使って0円になる場合は申告が必要です。ここを間違えると特例が使えなくなります。
基礎控除の計算式と判定手順は、下記の記事で解説しています。

不動産がある場合、最初に必要になる書類です。評価額が書かれているため、概算の出発点になります。毎年4〜6月に市区町村から届く納税通知書に同封されています。実家に届いていないか確認してください。
見つからない場合は、市区町村で名寄帳を取得すれば所有する不動産を一覧で確認できます。他の市区町村にも不動産がある場合、その自治体からも別に届いています。1通だけ見て全部だと思わないでください。
小規模宅地等の特例が使えるかの判定に直結します。ここで税額が数百万円変わります。確認すべきは、被相続人と同居していた相続人がいるか、その人が住民票だけでなく実際に住んでいたかです。
同居していない子が取得する場合は、いわゆる家なき子の要件を見ます。過去3年間に自分または配偶者の持ち家に住んでいなかったかが条件になります。賃貸住まいなら該当する可能性があります。持ち家があるなら該当しません。
通帳を見て、大きな出金や子・孫名義への振替がないかを確認してください。名義が子や孫でも、原資が被相続人で管理も被相続人だった場合は名義預金として相続財産に含めます。
相続税の税務調査で最も指摘が多いのが現金・預貯金です。事前に把握しておくと、申告後の追徴を避けられます。相続開始前7年以内の贈与は相続税の計算に加算されます。贈与契約書や贈与税の申告書があれば探しておいてください。
名義預金と判定された場合の影響は、下記の記事で解説しています。

同じ60分の相談でも、準備の有無で内容が変わります。
| 準備の状態 | 得られる回答 | 次にやること |
|---|---|---|
| 何も持たずに行く | 制度の一般論のみ | 資料を集めて再訪 |
| 家族構成のメモだけ | 基礎控除額と申告の要否の目安 | 財産の把握 |
| 財産の概算メモを追加 | おおよその税額と依頼費用の目安 | 特例の確認 |
| 課税明細書と同居の状況を追加 | 特例の適用可否と節税の方向性 | 正式依頼の判断 |
表の見方:最下行まで準備すると、1回の相談で依頼するかどうかを判断できます。最上行だと必ず2回目が必要になります。
重要ポイント:準備にかかる時間は1〜2時間程度です。複数の事務所を比較するなら、この準備は1回で使い回せます。

相続の情報は世の中にあふれていますが、個別の判断に使えるものは限られます。誤った答えを信じて申告しても、加算税を負担するのは納税者本人です。ここでは避けるべき情報源を整理します。
相続コンサルタント、相続診断士、終活アドバイザーといった民間資格の保有者がいます。これらの資格そのものは問題ありませんが、個別の税額計算や特例の適用判定を行うと税理士法52条に触れます。
「あなたの相続税はおよそ800万円です」「この土地は特例が使えます」といった回答は税務相談に当たります。問題は罰則よりも、その答えが正しい保証がないことです。誤った前提で分割を決めてしまうと、後から取り返せません。
注意:税理士かどうかは日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトで確認できます。氏名で検索すれば登録の有無が分かります。
参照元:国税庁 税理士に関する情報
銀行や信託銀行、不動産会社も相続の相談窓口を設けています。無料で丁寧に対応してくれます。ただし提案は自社の商品やサービスに向かいます。「アパートを建てると相続税が下がります」という提案は、借入と建築の受注が前提にあります。
節税効果そのものは事実ですが、空室リスクや修繕費まで含めた採算は別の話です。提案を受けたら、税理士に「この提案は自分の場合に合っているか」を確認してください。
制度の一般論を知るには有効です。基礎控除の計算式や期限といった事実は正確に得られます。しかし個別の適用判定はできません。「同居していたか」「持ち家があったか」の事実認定が必要な部分は、資料を見なければ判断できないためです。
また、記事の情報が古いことがあります。生前贈与の加算期間は3年から7年に延長され、相続登記も2024年に義務化されました。年度が明記されていない記事は、まず更新日を確認してください。
会社を経営している場合、顧問税理士に相続も頼みたくなります。ここに落とし穴があります。法人税と相続税は別の分野です。相続税の申告件数は税理士1人あたり年間1件程度で、経験差が大きく出ます。
特に土地の評価は経験の差がそのまま評価額の差になります。補正を漏らせば過大納付が確定します。顧問税理士に頼む場合も、相続税の申告実績を聞いてください。実績が少ないなら、相続税の対応実績がある事務所を紹介してもらう選択肢もあります。
税理士のミスが発覚した場合の対処は、下記の記事で解説しています。

相談先や情報を評価するときの確認項目です。
重要ポイント:最後の項目が最も重要です。登記もやります、もめごとも解決しますと答える税理士は、業務範囲を理解していない可能性があります。
申告済みでも見直せるセカンドオピニオンは、下記の記事で解説しています。


相談先が税理士だと決まったら、次は事務所の選択です。初回相談は無料の事務所が多く、複数から見積りを取っても費用はかかりません。
業務範囲を正確に切り分けられる税理士でなければ、無駄な往復が発生します。
【理由1】独占業務の範囲で個別判定ができる
「うちの場合いくらか」「この特例は使えるか」に、資料を見たうえで答えられます。
【理由2】特例の適用可否をその場で判断できる
同居の有無と持ち家の状況を聞けば、小規模宅地等の特例の可否は初回相談で分かります。
【理由3】他士業への橋渡しができる
登記は司法書士、争いは弁護士と切り分け、提携先を紹介できます。窓口を1つに保てます。
【理由4】グレーゾーンの線引きを説明できる
遺産分割協議書をどこまで作れるか、なぜそこで線が引かれるかを条文で説明できます。
【理由5】税務調査まで代理できる
申告した本人が調査に立ち会えます。後から別の税理士に頼むより対応が的確です。
実例で示します。自宅の土地5,000万円と預金2,000万円を子2人が相続し、長男が同居していたケースです。
A税理士は「登記もこちらでできます」と答えました。B税理士は「登記は提携の司法書士が担当します」と切り分けたうえで、同居の実態を確認して小規模宅地等の特例が使えると判定しました。
B税理士のほうが業務範囲を正確に理解しており、特例の判定も初回で終わっています。
初回相談で次の3点を確認してください。
判定ポイント1:相談内容が税理士の業務範囲かを最初に切り分けるか。A税理士は「全部お任せください」、B税理士は「登記は司法書士、分割の交渉は弁護士になります」と説明した。→ B税理士のほうが、後から追加の依頼先を探す手間が減ると判定できます。
判定ポイント2:他士業との提携の有無と紹介方法を明示するか。A税理士は「紹介できます」だけ、B税理士は「提携の司法書士で登記費用は別途8万円程度、紹介料の上乗せはありません」と答えた。→ B税理士のほうが、総額を把握しやすいと判定できます。
判定ポイント3:初回相談で特例の適用可否まで踏み込むか。A税理士は「資料を見てから」で終わり、B税理士は同居の有無と持ち家の状況を聞いて「この条件なら適用できます」と即答した。→ B税理士のほうが、過大納付を防げると判定できます。
3点を比較するには最低3社の見積りが必要です。1社では判断材料がありません。
相談先を間違えたまま進めると、次のような結果になります。
いずれも最初の相談で業務範囲を切り分けていれば防げます。
依頼までの流れは4段階です。
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費用の相場と見積書の見方は、下記の記事で解説しています。

相続税の申告書の作成・提出、税額の計算と特例の適用判定、個別の税務相談の3つが税理士法2条の独占業務です。加えて財産の評価、準確定申告と贈与税申告、税務調査の立会い、生前対策の提案、申告書の添付書類の作成を依頼できます。
判断の軸は「税金の話かどうか」です。税額に着地する相談なら税理士、財産を動かす手続きや相続人どうしの調整は他の士業になります。
相続税の申告書に添付する書類として作成する場合は依頼できます。申告書の作成に付随する業務だからです。
一方、相続人どうしで誰が何を取得するかを調整する行為は弁護士法72条の法律事務に当たり、税理士は扱えません。合意ができている内容を書面にするのは可、合意そのものを作りにいくのは不可という線です。
相続税の申告が不要な相続で協議書だけを作りたい場合は、行政書士または司法書士が対応します。
頼めません。登記の代理は司法書士法3条で司法書士の業務とされているためです。相続登記は2024年4月から義務化され、相続を知った日から3年以内の申請が必要になりました。
ただし多くの税理士事務所は司法書士と提携しており、紹介を受けられます。窓口を1つにしたまま進められるか、初回相談で確認してください。
聞かれることは4つに分かれます。亡くなった方のこと(死亡日・職業・事業の有無)、財産のこと(不動産の所在地と件数・預貯金の概算・保険・借入)、相続人のこと(人数と続柄・同居の有無)、希望と困りごと(何を頼みたいか・急ぐ事情)です。
必ず答える必要があるのは死亡日だけで、他は概算や「不明」でも相談は成立します。ただし同居の有無だけは正確に伝えてください。小規模宅地等の特例の適用判定に直結し、税額が数百万円変わります。
税理士法52条は、税理士でない者が税理士業務を行うことを禁じています。条文に「報酬を得る目的で」という限定がないため、無償であっても業として行えば違反です。違反した場合の罰則は2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と定められています。
罰則の対象は相談を受けた側ですが、実際に損をするのは誤った答えを信じて申告した相談者です。誤りがあっても加算税を負担するのは納税者本人になります。税理士登録の有無は日本税理士会連合会のサイトで確認できます。
税理士に相談できるかどうかの境界は、慣習ではなく法律で決まっています。税理士法2条が独占業務を3つ定め、52条が税理士でない者の税理士業務を禁じています。
判断の軸は「この相談は最終的に税額の話に着地するか」です。着地するなら税理士、財産を動かす手続きや相続人どうしの調整なら他の士業になります。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年8月時点の法令・通達に基づいて作成しています。相続税法の改正により取扱いが変更される場合があります。最新の制度については国税庁の公表資料をご確認いただくか、相続税の対応実績がある税理士にご相談ください。