小規模宅地等の特例|貸付事業用宅地(200㎡・50%減)の要件・計算・2018年改正と駐車場の注意点を解説

小規模宅地等の特例_貸付事業用宅地

貸付事業用宅地等とは、亡くなった人がアパートや駐車場などの貸付けに使っていた土地のことです。小規模宅地等の特例を使うと、200㎡までの評価額を50%減額できます。

小規模宅地等の特例は土地の用途によって4つの区分に分かれており、貸付事業用宅地等はその一つです。減額割合は4区分のなかで最も低く設定されています。

この特例は、要件を満たすかどうかの判断が分かれやすい制度です。2018年の税制改正で「3年縛り」と呼ばれる制限が加わり、判定がさらに細かくなりました。

駐車場では、構築物があるかどうかで結論が変わります。舗装や砂利敷きがなければ、貸していても特例は使えません。

アパートに空室がある場合も、その部分の敷地を含められるかが問題になります。空室の期間と募集の実態で判断が分かれます。

複数の土地を持っている場合は、どの土地に何㎡使うかで税額が変わります。居住用や事業用と組み合わせるときは面積の按分計算も必要です。

この記事では、貸付事業用宅地等の適用要件、3年縛りとその例外、駐車場と空室の判定、200㎡・50%の計算方法、5パターンの試算、添付書類、生前対策までを解説します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 200㎡まで50%減額できるが、居住用(330㎡・80%)や事業用(400㎡・80%)より減額割合が低いため、どの土地に使うかの判定が要になる
  • 相続開始前3年以内に新たに貸付を始めた土地は原則対象外。ただし3年を超えて事業と呼べる規模で貸していた場合は例外として使える
  • 青空駐車場は構築物がないため使えない。舗装や砂利敷きがあれば構築物の敷地として使えるようになる
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貸付事業用宅地等とは|小規模宅地等の特例の4区分の一つ

小規模宅地等の特例は、被相続人が使っていた土地の相続税評価額を大幅に減額できる制度です。土地の用途によって4つの区分に分かれており、貸付事業用宅地等はその一つです

小規模宅地等の特例4区分と貸付事業用の位置づけ

小規模宅地等の特例には、以下の4つの区分があります。

区分対象となる土地限度面積減額割合
特定居住用宅地等被相続人の自宅・配偶者や同居親族が取得した場合330㎡80%
特定事業用宅地等被相続人の事業(商業・工業等)に使っていた土地400㎡80%
特定同族会社事業用宅地等被相続人が役員の同族会社が事業に使っていた土地400㎡80%
貸付事業用宅地等被相続人が不動産貸付・駐車場等に使っていた土地200㎡50%

貸付事業用宅地等は4区分の中で最も限度面積が小さく(200㎡)、減額割合も最も低い(50%)区分です。他の3区分(80%減額)より節税効果が劣るため、複数の土地を相続する際は「有利判定」が特に重要になります。

貸付事業用宅地等の特例は200㎡・50%減額と他の区分より低い設定です。特定居住用や特定事業用の土地もある場合は、どの土地にどの特例を優先適用するかを必ず計算してから判断することが重要です。

参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

対象となる貸付事業の種類(アパート・マンション・駐車場等)

貸付事業用宅地等の特例の「貸付事業」とは、以下のような不動産の貸付に関わる事業です。

貸付事業の種類具体例特例適用
不動産貸付業アパート・マンション・貸家・貸事務所・貸店舗可(要件を満たす場合)
駐車場業月極駐車場・時間貸し駐車場(構築物あり)可(構築物が必要)
駐輪場業自転車・バイクの駐輪場可(構築物あり)
青空駐車場構築物のない更地の駐車場不可
準事業継続的・相当の対価の貸付で事業規模未満のもの可(相当の対価が必要)

重要なのは「建物または構築物の敷地」であるという要件です。アパートやマンションであれば通常この要件を満たしますが、駐車場・駐輪場の場合は舗装等の「構築物」があるかどうかで適用可否が分かれます。

貸付事業用宅地等の特例は「事業」として継続的に行われていることが前提です。一時的な賃貸や相場より著しく低い賃料での貸付は「相当の対価」の要件を満たさず、特例が適用できない場合があります。

特定居住用・特定事業用との違い(200㎡・50%)

貸付事業用宅地等と他の区分の主な違いをまとめます。

比較項目貸付事業用宅地等特定居住用宅地等特定事業用宅地等
限度面積200㎡330㎡400㎡
減額割合50%80%80%
主な対象アパート・駐車場等の敷地被相続人の自宅敷地商業・工業等の事業用土地
3年縛りあり(2018年改正)なしあり(2018年改正)
他区分との併用可(面積按分計算あり)可(特定事業用と完全併用可)可(居住用と完全併用可)

最大の特徴は「減額割合が50%」であり、80%の他の区分より節税効果が低い点です。一方で、貸付事業用宅地等は特定居住用・特定事業用と「完全に独立した面積制限」ではなく、按分計算が必要です(後述)。

特定居住用(330㎡・80%)と貸付事業用(200㎡・50%)を同時に使う場合は、面積の按分計算が必要です。単純に両方の限度面積を使えるわけではありません。

4つの区分それぞれの要件と、どの土地に使うと得になるかは、下記の記事で解説しています。

貸付事業用宅地等の3つの適用要件

貸付事業用宅地等の特例を適用するためには、3つの要件をすべて満たす必要があります。1つでも欠けると特例は適用できません

要件1|建物または構築物の敷地であること

貸付事業用宅地等の特例の対象となるのは「建物または構築物の敷地の用に供されている宅地等」です。アパートやマンションであれば、建物の敷地として自動的にこの要件を満たします。駐車場・駐輪場の場合は、この要件の判定が重要になります。

土地の状態構築物の有無特例適用
アパート・マンションの敷地あり(建物)
アスファルト舗装の駐車場あり(構築物)
砂利敷きの駐車場あり(構築物)
コンクリート舗装の駐車場あり(構築物)
白線のみ(舗装なし)の青空駐車場なし不可
フェンス・精算機のみ(舗装なし)状況による要確認

「構築物」とは、土地に人工的に設置した工作物で、土地から独立して存在するものを指します。アスファルト・コンクリート・砂利の舗装は構築物と認められますが、更地に単に白線を引いただけの青空駐車場は構築物なしとして特例不可になります。

駐車場が「構築物あり」かどうかは、舗装の種類と状況で判断します。砂利を敷くだけでも構築物として認められるケースがありますが、税務署の判断が分かれることもあるため、申告前に税理士に確認することが必要です。

要件2|相当の対価による貸付であること(使用貸借は不可)

貸付事業用宅地等の特例は、「相当の対価(賃料)を受け取って貸し付けていること」が条件です。無償または著しく低い賃料での貸付(使用貸借)は対象外になります。

貸付の形態特例適用注意点
市場相場の賃料での貸付
相場より多少低い賃料での貸付状況による著しく低くなければ可能な場合あり
無償での貸付(使用貸借)不可子に無償で貸している土地は対象外
固定資産税程度の賃料不可「相当の対価」とは認められない
親族に相場の家賃で貸付相場賃料であれば親族でも可

「相当の対価」かどうかは、地域の相場賃料と比較して判断されます。固定資産税額程度しか賃料をもらっていない場合は「相当の対価」とは認められないため、特例は適用できません。

子に建物を貸して賃料を受け取っている場合でも、賃料が相場より著しく低い場合は「相当の対価」の要件を満たさず特例不可になります。賃貸借契約書・賃料の入金記録を整備しておくことが必要です。

要件3|申告期限までの事業継続・保有継続

相続開始から相続税の申告期限(10か月以内)まで、以下の2つを継続していることが必要です。

継続要件内容
事業継続要件申告期限まで貸付事業を引き継ぎ、継続して行っていること
保有継続要件申告期限まで相続した宅地等を保有していること(売却は不可)

申告期限前に土地を売却した場合は特例が取り消されます。また、相続後に貸付事業を廃止した場合(建物を取り壊して更地にした等)も事業継続要件を満たさなくなります。

申告期限(10か月)前に土地を売却すると特例が適用できなくなります。売却を検討している場合も、まず申告を完了してから売却することが重要です。

事業用として使っていた土地の要件は、下記の記事で解説しています。

2018年改正「3年縛り」|3年以内取得の制限と例外

2018年(平成30年)の税制改正で、貸付事業用宅地等の特例に「3年縛り」と呼ばれる制限が追加されました。相続直前に不動産を取得して節税する行為を防ぐための改正です

3年縛りの内容と対象となる宅地

2018年4月1日以後の相続から、「相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等」は、原則として貸付事業用宅地等の特例の対象外になりました。

取得・貸付開始の時期特例適用備考
相続開始前3年超前から貸付中通常の要件を満たせば適用可
相続開始前3年以内に新たに貸付開始原則不可事業的規模の例外あり
2018年3月31日以前から貸付中(経過措置)2018年改正前から貸付の土地は従来通り

「新たに貸付事業の用に供された」とは、相続開始前3年以内に購入した不動産で貸付を開始した場合や、更地を駐車場に転用して貸付を開始した場合などが該当します。

3年以内に取得・貸付開始した宅地は原則として特例不可です。ただし「事業的規模」の例外があるため、3年以内取得でも事業的規模を満たしていれば適用できる場合があります。

例外|「事業的規模」なら3年以内でも適用できる

3年縛りには例外があります。相続開始前3年以内に新たに取得・貸付開始した宅地でも、「相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業(事業的規模の貸付事業)を行っていた被相続人等の貸付事業の用に供されたもの」は特例の対象になります。

簡単に言えば、「大規模な不動産貸付業者が新たに取得した物件」は3年縛りの対象外ということです。

状況特例適用
アパート1棟(10室)のみを所有・3年以内に取得可能(事業的規模を満たす)
アパート3棟を所有・新たに1棟(3年以内)を追加取得可能(既存3棟で事業的規模)
相続直前に初めてアパートを取得・貸付開始不可(事業的規模なし)
更地を3年以内に月極駐車場に転用不可(事業的規模なしなら)

3年縛りの例外として「事業的規模の貸付事業者が追加取得した物件」は適用対象になります。既存の貸付物件が事業的規模を満たしているかどうかを確認することが必要です。

5棟10室基準・年収500万円基準の判定方法

「事業的規模」の判定は、所得税の取り扱いを参考に行われます。一般的に「5棟10室基準」が使われます。

判定基準内容
5棟基準独立した建物を5棟以上貸し付けている一戸建て5軒を賃貸
10室基準マンション・アパートで10室以上貸し付けている10室のアパート1棟
混在する場合(棟数/5)+(室数/10)≧1 で事業的規模3棟+5室:(3/5)+(5/10)=1.1≧1→事業的規模

駐車場のみの場合は、駐車場の台数で判定します(おおむね50台以上が事業的規模の目安とされることがあります)。ただし、駐車場の「事業的規模」の明確な基準は所得税法で定められておらず、個別の事情によって判断が異なる場合があります。

事業的規模の判定計算例(混在する場合)

物件の内訳計算式判定
アパート15室(1棟)0/5 + 15/10 = 1.5 ≧ 1事業的規模あり
アパート3棟(12室)3/5 + 12/10 = 1.8 ≧ 1事業的規模あり
戸建て3軒+アパート5室3/5 + 5/10 = 1.1 ≧ 1事業的規模あり
戸建て2軒+アパート3室2/5 + 3/10 = 0.7 < 1事業的規模なし(3年縛り対象)
戸建て1軒のみ1/5 + 0/10 = 0.2 < 1事業的規模なし(3年縛り対象)

計算式の結果が「1以上」であれば事業的規模ありとして3年縛りの例外が使えます。

5棟10室の基準は目安であり、必ずしも5棟10室未満だと事業的規模と認められないわけではありません。実際の事業規模・管理方法・収益規模を含めて総合的に判断されます。判定に迷う場合は税理士への相談が必要です。

例外が使えるのはどんな場合か|3年を超えて続けていたかで決まる

3年以内に貸付を始めた土地でも、例外にあたれば特例を使えます。分かれ目は、相続開始の日まで3年を超えて貸付事業を続けていたかどうかです

国税庁は「相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業を行っていた被相続人等の用に供された宅地等については、3年以内貸付宅地等に該当しません」と示しています。

ここで出てくる特定貸付事業は、「貸付事業のうち準事業以外のもの」と定義されています。つまり事業と呼べる規模で貸していたかどうかが問われます。

準事業にとどまる規模だった場合、この例外は使えません。3年以内に始めた土地はそのまま対象外になります。

貸付を始めた時期3年超の継続貸付の規模特例を使えるか
3年より前使える
3年以内あり事業と呼べる規模使える(例外)
3年以内あり準事業にとどまる使えない
3年以内なし使えない

表の見方:3年以内に始めた土地で例外が使えるのは、3年超の継続と事業と呼べる規模の両方を満たす場合だけです。薄赤の2行はどちらか一方を欠くため対象外になります。

注意が必要なのは、途中で規模が落ちた場合です。物件を売って事業と呼べる規模を下回った期間があると、継続していたとは扱われません

3年以内に一部を売却して規模が縮小したケースでは、例外から外れることがあります。売却の時期と、その後の規模を並べて確認してください。

注意:「3年を超えて続けていた」は、3年間のどこにも規模が落ちた空白がないことを意味します。一時的に規模を下回った期間があると例外は使えません

日付を入れて見ます。2026年8月に相続が発生したケースで考えます。

貸付を始めた時期相続時までの期間相続時の規模3年超の継続結論
例12024年4月2年4か月アパート1棟3年に届かない使えない
例22018年8年10室+2024年に2室を追加途切れなし使える
例32018年8年2室(2024年に8室を売却)2024年に途切れた使えない

表の見方:例2では2024年に追加した2室の土地も特例を使えます。2018年から事業と呼べる規模を3年超続けているためです

重要ポイント:例1と例3はどちらも「使えない」ですが理由が違います。例1は期間が足りず、例3は期間は足りているのに売却で規模が途切れたことが原因です

継続していたことを示す資料も用意しておきます。賃貸借契約書・確定申告書・入居者の一覧が、規模と期間を示す根拠になります。売却があった場合は、その前後で規模がどう動いたかを整理しておいてください。

参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

参照元:e-Gov 租税特別措置法 第69条の4

駐車場・駐輪場の取り扱い|構築物の有無が適用を左右する

駐車場・駐輪場に貸付事業用宅地等の特例を適用する際、最大の判断ポイントは「構築物があるかどうか」です。実務上、この判断で適用可否が分かれるケースが多いため、正確な理解が必要です。

青空駐車場(構築物なし)は特例不可

構築物のない「青空駐車場」は、貸付事業用宅地等の特例の対象外です。建物または構築物の敷地でないため、要件1を満たしません。

駐車場の状態構築物の判定特例適用
更地に白線を引いただけなし不可
フェンスのみ設置(舗装なし)状況による要確認
砂利敷きあり
アスファルト舗装あり
コンクリート舗装あり
カーポート(屋根付き)あり(建物の場合も)

砂利を敷くだけでも「構築物あり」として認められる可能性があります。現在、青空駐車場(更地のまま)で運用している場合は、砂利敷きやアスファルト舗装を行うことで特例の対象にできます。

青空駐車場を特例の対象にするためには、相続発生前に砂利やアスファルト等の舗装を行うことが必要です。相続発生後に施工しても要件を満たしません。生前対策として早めに検討することが重要です。

構築物「あり」と認められる舗装の種類と条件

構築物として認められるかどうかは、土地に何を設置しているかで判断します。

舗装・設備の種類構築物として認められるか確認の手がかり
アスファルト舗装認められる固定資産税の課税明細に構築物の記載
コンクリート舗装認められる同上
砂利敷き認められる(程度による)施工の記録・写真
土留め・よう壁・石垣認められる課税明細
フェンス・車止め・精算機認められる設置の記録
何も設置していない更地認められない青空駐車場として扱われる

表の見方:舗装だけでなく、土留めやフェンスなどの設備も構築物に含まれます。薄赤の行だけが特例を使えないケースです

重要ポイント:砂利敷きは程度によって判断が分かれます。固定資産税の課税明細に構築物として記載があるかを先に確認してください

時間貸し駐車場(コインパーキング)の取り扱い

コインパーキング(時間貸し駐車場)の場合、運営形態によって適用可否が変わります。

運営形態特例適用理由
土地を駐車場業者に一括貸付(土地のみ)可(構築物があれば)被相続人は不動産貸付業として扱われる
自己管理のコインパーキング可(構築物があれば)設備一式が構築物として認められる
コインパーキング業者が設備設置・運営可(業者が設備を設置している場合)業者の設備(精算機・フラップ等)が構築物

コインパーキング業者(Times等)に土地を貸して業者が設備を設置している場合、業者の設備(精算機・ロック板・フェンス等)が構築物として認められることがあります。

コインパーキング業者に一括賃貸している場合、業者が設置した設備(精算機・ロック板等)が「構築物」として認められるかどうかが重要です。業者との契約内容・設備の帰属(誰の所有か)を確認することが必要です。

実務上よく問題になる判断ケース

ケース構築物の判定特例適用実務上のポイント
フェンス・看板のみ(舗装なし)判断が分かれる要確認フェンスのみでは認められない可能性高い
ロック板のみ(コンクリートなし)認められにくい不可の可能性地面の舗装がなければ構築物なしとなるケースあり
砂利+白線(フェンスなし)あり(砂利が構築物)砂利の敷設状況・厚みが確認対象
アスファルト舗装(舗装後すぐ相続)あり3年縛りの確認が必要舗装時期と相続時期の関係を確認

国税庁の通達(昭和40年度の評価通達等)では、構築物として認められるものに「鋪装路面」「土留・よう壁・石垣」「砂利敷」等が含まれています。

これらが固定資産税の課税台帳に「構築物」として記載されている場合は、特例適用の根拠として活用できます。

台数で規模を判定するときの実務の目安

事業と呼べる規模かどうかは、建物なら部屋数や棟数で見るのが一般的です。駐車場の場合は台数で考えます。実務では駐車場5台を1室に換算して考えるとされています。50台の駐車場なら10室に相当するという見方です。

注意:この換算は通達に直接定められたものではありません。台数が目安の前後にある場合は、規模の判定そのものが争点になり得ます。事前に確認しておくのが安全です。

建物と駐車場の両方を持っている場合は、合わせて規模を見ます。アパートの部屋数だけでは足りなくても、駐車場を加えると事業と呼べる規模に届くことがあります。

空室がある場合の取り扱い

相続開始日の時点でアパートやマンションに空室がある場合、その空室部分の敷地について特例が使えるかどうかが問題になります。結論としては、「一時的な空室」であれば特例の対象になります

「一時的な空室」として認められる目安

課税実務上、「一時的な空室」かどうかは以下の状況を総合的に判断します。

状況一時的と認められやすい一時的と認められにくい
空室期間概ね1〜2か月以内半年以上の空室
入居者募集退去後すぐに募集活動を開始募集活動なし・放置状態
建物の状態貸付可能な状態を維持老朽化で事実上貸付不可
過去の貸付実績継続的に賃貸していた実績ありほとんど空室状態が続いていた

空室が1〜2か月程度で、すぐに入居者募集を行っていた場合は一時的な空室として全体を貸付中の状態として扱うことができます。

空室が「一時的」かどうかは個別の状況で判断されます。退去後に不動産会社への依頼記録・広告掲載の記録を残しておくことで、「積極的に入居者を探していた」という証拠になります。

長期空室・建て替え中の場合の対応

相続開始時に長期間の空室が続いている場合や、建物の建て替え中の場合は特例の適用が制限される可能性があります。

【空室が長引いた場合の扱い】

  • 長期空室(半年以上):「一時的な空室」とは認められず、空室部分の敷地は特例対象外になる可能性がある
  • 建て替え中:建て替え目的での解体中であれば引き続き貸付事業用として認められる場合あり(建て替え後の使途が明確な場合)
  • 長期修繕中:修繕の規模・期間によって判断が分かれる

建て替え中の場合は、建て替え後に引き続き賃貸に使う予定であることを示す書類(建築確認申請書・建設会社との契約書等)を準備しておくことが重要です。

空室率が高い場合の対応策

空室率が高く特例の適用が不確実な場合の対応策を確認しましょう。

【空室率が高い場合にできること】

  • 相続発生前に可能な範囲で入居者を確保する
  • 空室募集の記録(仲介業者への依頼書・広告掲載記録)を整備する
  • 相続後も速やかに入居者募集を継続する
  • 空室が半年を超えている場合は税理士に個別相談する

空室率が高い場合でも、積極的な入居者募集の記録があれば「一時的な空室」と認められる可能性があります。申告前に空室の状況・期間・募集活動の記録をまとめて税理士に確認することが必要です。

貸付事業用宅地等の計算方法|200㎡・50%の仕組み

貸付事業用宅地等の特例を適用した場合の評価額計算と、他の区分と組み合わせる場合は按分計算が必要です

基本の計算式と適用手順

貸付事業用宅地等の特例を単独で使う場合の計算式は次のとおりです。

減額される金額 = 相続税評価額 ×(適用面積÷全体面積)× 50%

限度面積に収まる場合と超える場合を、同じ単価(1㎡あたり20万円)で並べます。

項目例1|200㎡・4,000万円例2|300㎡・6,000万円
全体面積200㎡(限度内)300㎡(限度超え)
適用できる面積200㎡(全面積)200㎡(限度まで)
1㎡あたりの評価額20万円20万円
もとの評価額4,000万円6,000万円
減額額2,000万円2,000万円
特例後の評価額2,000万円4,000万円

表の見方:面積が1.5倍になっても、減額額はどちらも2,000万円で同じです。適用できる面積が200㎡で打ち止めになるためです。

重要ポイント:限度面積を超える土地では、超えた部分の評価額がそのまま残ります。例2では6,000万円のうち4,000万円が課税対象として残ります。

計算ロジック:【前提】1㎡あたりの評価額を20万円で共通にしています。例1は全面積に50%を掛け、例2は限度面積200㎡分だけに50%を掛けます。どちらも減額の対象は200㎡までです。

面積が200㎡を超える場合は、超過部分の評価をどう下げるかを別に検討します。

参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

他の区分との面積按分計算(調整計算)

特定居住用・特定事業用・貸付事業用を組み合わせる場合は、面積の按分計算が必要です。

計算式は「(特定居住用の選択面積÷330)×200 +(特定事業用等の選択面積÷400)×200 + 貸付事業用の選択面積 ≦ 200㎡」です。

自宅と貸付事業用の2つを組み合わせる場合、自宅に使う面積を減らした分だけ貸付事業用に回せます

自宅に使う面積換算後の面積貸付事業用に使える面積状態
330㎡(全部)200㎡0㎡自宅で使い切る
247.5㎡150㎡50㎡
165㎡(半分)100㎡100㎡ちょうど半分ずつ
82.5㎡50㎡150㎡
0㎡0㎡200㎡貸付事業用で使い切る

表の見方:自宅の面積を330で割って200を掛けた値が、貸付事業用の枠から差し引かれます。自宅に330㎡すべて使うと、貸付事業用に使える面積はゼロになります

計算ロジック:【前提】特定居住用の限度面積330㎡、貸付事業用の限度面積200㎡。特定居住用の選択面積を330で割り200を掛けて換算し、貸付事業用の選択面積と合わせて200㎡以内に収める必要があります。

どちらに何㎡使うかで最終的な減額額が変わります。必ず有利判定の計算をしてから選んでください

有利判定|居住用・事業用・貸付事業用の優先順位

複数の土地に特例を適用できる場合、節税額が最大になるように土地と面積を選択します。

【基本の考え方】

  • 減額率が高い(80%)土地を優先する
  • 1㎡あたりの評価額が高い土地を優先する
  • 面積制限が大きい区分を先に使いきる
優先順位条件理由
第1優先高単価(1㎡あたり)かつ80%減の土地減額効果が最大
第2優先高単価かつ50%減の土地
第3優先低単価かつ80%減の土地
第4優先低単価かつ50%減の土地節税効果が最小

一般的に、都市部の自宅(高単価・80%減)> 郊外のアパート(低単価・50%減)という優先順位になることが多いですが、個別の評価額・面積で計算が必要です。

有利判定の早見表(土地Aと土地Bを比較する場合)

土地の組み合わせ節税効果の計算式判定のポイント
自宅(高単価・80%減)を優先自宅評価額 × 80% + アパート余り面積分 × 50%通常はこちらが有利
アパート(低単価・50%減)を優先アパート評価額 × 50% + 自宅余り面積分 × 80%アパートの評価が高い場合に有利
自宅のみ(全面積330㎡)自宅評価額 × 80%(アパートは特例なし)アパートが低評価の場合に有利

有利判定の具体的な計算例

自宅330㎡・6,600万円(1㎡あたり20万円)と、アパート敷地200㎡・2,000万円(1㎡あたり10万円)を持っているケースで比べます。

選択肢自宅に使う面積アパートに使う面積減額の内訳減額の合計
A|自宅のみ330㎡0㎡自宅 5,280万円5,280万円
B|自宅165㎡+アパート100㎡165㎡100㎡自宅 2,640万円+アパート 500万円3,140万円
C|アパートのみ0㎡200㎡アパート 1,000万円1,000万円

表の見方:同じ土地を持っていても、どちらに特例を使うかだけで結果が変わります。AとCの差は4,280万円、倍率にして5.28倍です

重要ポイント:按分の枠200㎡のうち1㎡を自宅に回すと26.4万円、アパートに回すと5万円の減額になります。この1㎡あたりの減額額を比べれば、試算する前に有利な方向が分かります

計算ロジック:【前提】自宅は1㎡20万円・330㎡・80%減、アパートは1㎡10万円・200㎡・50%減。按分式は「(自宅の選択面積÷330)×200+アパートの選択面積≦200㎡」。選択肢Bは(165÷330)×200+100=200㎡で収まります。

自宅の単価が高いほど、自宅に特例を集中させる方が有利になります。

有利判定では「単価×面積×減額率」の計算を組み合わせごとに行ってください。自宅とアパートの評価単価を比べたうえで、複数の組み合わせを試算して選びます。

賃貸不動産そのものの評価額を下げる方法は、下記の記事で解説しています。

ケース別シミュレーション5パターン|貸付事業用宅地で節税額はいくら変わるか

貸付事業用宅地等の特例を適用した場合の節税効果を、5つのパターンで試算します。なお、すべて概算であり個別の事情によって異なります

パターン1|アパート敷地(180㎡)を単独で相続するケース

限度面積に収まる場合の基本形です。全面積に特例を使えます。

前提条件

  • 被相続人:父(配偶者なし)
  • 相続人:長男1人(基礎控除3,600万円)
  • 相続財産:アパート敷地180㎡(評価額3,600万円)+現金1,000万円
  • アパートは3年以上前から貸付中・申告期限まで継続予定
項目特例あり特例なし
適用面積180㎡(全面積)
減額額3,600万円×50%=1,800万円0円
敷地の評価額1,800万円3,600万円
課税価格2,800万円4,600万円
課税遺産総額0円1,000万円
相続税0円100万円

このケースでは特例を適用すると相続税が100万円から0円になります。適用漏れがないよう、申告前に要件を確認してください。

パターン2|アパート敷地(300㎡・限度面積超え)を相続するケース

限度面積を超えると、超えた部分には特例が使えません。

前提条件

  • 被相続人:父(配偶者なし)
  • 相続人:長男1人(基礎控除3,600万円)
  • 相続財産:アパート敷地300㎡(評価額9,000万円・1㎡あたり30万円)
項目特例あり特例なし
適用面積200㎡(限度面積)
減額額30万円×200㎡×50%=3,000万円0円
敷地の評価額6,000万円9,000万円
課税遺産総額2,400万円5,400万円
相続税310万円920万円

特例の適用で610万円の差が出ます。ただし超過した100㎡には特例が及びません。

超過部分の評価をどう下げるかは別に検討します。賃貸用不動産そのものの評価を下げる方法は、この後の記事で扱う範囲です。

パターン3|自宅(330㎡)とアパート敷地(200㎡)を同時相続するケース

複数の土地がある場合は、どちらに使うかで結果が変わります。

前提条件

  • 被相続人:父(母は既に死亡)
  • 相続人:長男(同居)
  • 自宅土地:330㎡(評価額6,600万円・1㎡あたり20万円)
  • アパート敷地:200㎡(評価額2,000万円・1㎡あたり10万円)
選択自宅の減額アパートの減額減額の合計
A:自宅のみ330㎡(80%)6,600万円×80%=5,280万円0円5,280万円
B:自宅165㎡+アパート100㎡20万円×165㎡×80%=2,640万円10万円×100㎡×50%=500万円3,140万円
C:アパートのみ200㎡(50%)0円2,000万円×50%=1,000万円1,000万円

自宅のみに使うAが最も有利で、併用するBの1.7倍の減額になります。単価と減額割合の組み合わせで結論が変わります。

パターン4|砂利敷き駐車場(100㎡)を相続するケース

構築物があるかどうかで適用の可否が分かれる例です。

前提条件

  • 被相続人:父(月極駐車場として運営・砂利敷き)
  • 相続人:長男1人(基礎控除3,600万円)
  • 相続財産:駐車場敷地100㎡(評価額1,500万円)+現金2,000万円
  • 3年以上前から月極で10台貸付中
項目砂利敷き(構築物あり)青空駐車場(構築物なし)
特例の適用使える使えない
減額額1,500万円×50%=750万円0円
課税価格2,750万円3,500万円
相続税0円0円(基礎控除以下)

この規模ではどちらも基礎控除に収まるため税額に差が出ません。財産が大きくなると差が現れます。

砂利敷きの有無は固定資産税の課税台帳で確認できます。相続が起きる前に確認しておいてください。

パターン5|3年以内取得の賃貸物件で事業的規模を満たすケース

3年縛りの例外が効く例です。既存物件の規模が結論を決めます。

前提条件

  • 被相続人:父(不動産賃貸業)
  • 既存物件:アパート3棟15室を10年以上前から貸付中
  • 新規取得:2年前にアパート1棟8室を追加購入
  • 新規取得アパートの敷地180㎡(評価額3,600万円)
判定項目内容結論
新規取得の時期相続開始前2年原則は3年縛りの対象
既存物件の規模15室(10室基準以上)事業と呼べる規模を満たす
3年超の継続10年以上継続の要件を満たす
特例の適用減額額1,800万円例外として使える

既存物件で規模を満たしていれば、3年以内に取得した物件にも使えます。既存の棟数・室数と、確定申告書などの証明書類を用意してください。

このパターンは既存物件を含めた財産の全体像で税額が決まるため、減額額だけを示しています。

5パターンの横比較|どこで結果が分かれるか

5つのパターンを並べると、結果を分ける要素が見えます。

パターン土地の内容特例の扱い効果
1アパート180㎡(3,600万円)全面積に適用相続税100万円 → 0円
2アパート300㎡(9,000万円)200㎡が限度920万円 → 310万円(610万円の差)
3自宅330㎡+アパート200㎡自宅のみが有利減額5,280万円(併用は3,140万円)
4砂利敷き駐車場100㎡(1,500万円)構築物ありで適用この規模では差が出ない
53年以内取得のアパート180㎡規模を満たせば例外減額1,800万円

表の見方:効果の大きさは土地の評価額と面積で決まります。限度面積を超えるパターン2と、有利判定が必要なパターン3で差が最も大きくなります

重要ポイント:パターン4のように、財産が基礎控除に収まる場合は特例の有無で税額が変わりません。特例の要件を満たすかより先に、相続税がかかる規模かを確認してください

計算ロジック:【前提】いずれも相続人1人で基礎控除3,600万円。パターン3は減額額の比較、パターン5は既存物件を含めた全体像が必要なため減額額のみを示しています。すべて概算で、個別の事情によって変わります。

参照元:国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分

添付書類と申告手続きの注意点

貸付事業用宅地等の特例を申告する際に必要な書類と、書類が1つ欠けるだけで特例が適用されないことがあります

必要書類の完全チェックリスト

全共通の基本書類(取得先・期間の目安)

書類取得先取得期間の目安
小規模宅地等の課税価格の計算明細書(付表1)税務署(様式)・国税庁ウェブサイト即日ダウンロード可
遺産分割協議書または遺言書自分で作成または公証役場協議に要する期間による
相続人全員の印鑑証明書各自の住所地の市区町村役場即日
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)本籍地の市区町村役場1〜3週間(郵送の場合)

貸付事業用宅地等専用の追加書類(取得先・期間の目安)

書類取得先取得期間の目安
賃貸借契約書のコピー手元の契約書から用意即日
賃料の入金記録(通帳のコピー等)銀行通帳・ネットバンキング明細即日〜1週間
建物の登記事項証明書法務局(オンライン申請可)即日〜1週間
固定資産税課税台帳(構築物の証明)市区町村役場(固定資産税担当)即日〜1週間

3年縛りの例外(事業的規模)を適用する場合の追加書類

  • □ 過去3年以上の確定申告書(不動産所得の申告)
  • □ 不動産管理台帳・賃貸物件一覧(棟数・室数を証明)
  • □ 既存物件の賃貸借契約書一覧

重要ポイント:賃貸借契約書と賃料の入金記録は「相当の対価」の要件を証明する最も重要な書類です。月極駐車場は口頭の契約になっていることが多く、書面がない場合は早急に書面化してください

貸付事業用宅地等の特例は申告書への記載と添付書類が必要です。書類が不備だと特例が認められないリスクがあるため、早めに税理士に依頼して書類を整備することが重要です。

申告期限内の分割・申告が適用条件

貸付事業用宅地等の特例は、「申告期限(相続開始から10か月以内)内に遺産分割が完了し、申告書を提出すること」が条件です。誰がアパートの敷地を相続するかが決まっていない(未分割)状態では、特例を適用することができません。

「申告期限内に遺産分割が完了すること」が特例の絶対条件です。相続人間の話し合いが長引く場合でも、申告期限は延長されません。期限内に「分割見込書」を提出することで後から適用できる場合がありますが、まず期限内申告を優先することが必要です。

未分割の場合の対処法

相続人間で誰がアパート敷地を取得するか合意できない場合:

【分割が決まらないときの手順】

  • 期限内に「未分割申告」を行う(法定相続分で仮計算)
  • 「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付する
  • 分割確定後に「更正の請求」を行い特例を後から適用する(分割確定後4か月以内)

見込書を提出せずに申告期限を過ぎると、後から特例を適用する権利が失われます。分割が確定しない場合でも、必ず申告期限内に見込書とともに未分割申告を行うことが必要です。

相続税の申告に必要な書類の全体像は、下記の記事で解説しています。

申告書では、第11・11の2表付表1に記載して特例を反映します。この付表を出さないと、要件を満たしていても特例は適用されません

分割が決まっていない場合は、申告期限後3年以内の分割見込書を添えて期限内に申告します。様式は国税庁のサイトで確認できます。

参照元:国税庁 No.4202 相続税の申告のために必要な準備

貸付事業用宅地等の生前対策

特例を確実に活用するため、3年縛りがあるため、着手する時期が結果を左右します

青空駐車場を構築物ありに変える

現在、青空駐車場(構築物なし)として運営している場合、相続前に舗装工事を行うことで特例の対象にできます。

対策内容費用の目安
砂利敷き地面に砂利を均等に敷く1㎡あたり2,000〜5,000円程度
アスファルト舗装アスファルト舗装を施工1㎡あたり5,000〜10,000円程度
コンクリート舗装コンクリートで舗装1㎡あたり8,000〜15,000円程度

100㎡の駐車場を砂利敷きにする費用は20〜50万円程度ですが、特例で削減できる相続税は(評価額2,000万円・税率20%として)200万円以上になる場合があります。

青空駐車場を砂利敷きにする生前対策は、数十万円の投資で数百万円の節税効果が期待できます。ただし「3年縛り」の対象にならないよう、可能な限り早めに施工することが重要です。

事業的規模(5棟10室)を確保する

3年縛りの例外(事業的規模)を確保するための対策を確認します。

【事業と呼べる規模を確保する手順】

  • 現在の物件数・室数を確認し、事業的規模(5棟10室)を満たしているか確認する
  • 満たしていない場合は、追加物件の取得・改装等を検討する
  • 新たに物件を取得する際は、既存物件で事業的規模を確保した状態で取得する

事業的規模を確保することで、将来的に新たな物件を取得した場合でも3年縛りの例外が使えます。現在の物件が事業的規模を満たしているか、税理士に確認することをお勧めします。

使用貸借を有償貸借に変える

子に土地を無償で貸している(使用貸借)場合、有償の賃貸借に変えることで特例の対象にできます。ただし有償化のタイミングが相続開始前3年以内だと「3年縛り」の対象になる点に注意が必要です。早めに有償化を検討することが生前対策の基本です。

【使用貸借を有償に切り替える手順】

  • 書面による賃貸借契約書を作成する
  • 相場相当の賃料を設定する(固定資産税程度では不可)
  • 実際に賃料を受け取り、通帳に記録を残す
  • 確定申告で不動産所得として申告する

使用貸借から有償貸借に変える際は、賃料の金額・支払い方法を明確にした賃貸借契約書を作成し、実際に賃料の授受を行うことが必要です。名目だけの賃貸借は「相当の対価」と認められません。

対策の効果が出るまでにかかる期間

生前対策は、始めてすぐ効果が出るものと、一定期間を置かないと効かないものに分かれます。3年縛りがあるため、始める時期が結果を左右します

対策効果が出るまで注意点
青空駐車場を舗装する工事後すぐ新たに貸付を始めた扱いなら3年縛りの対象
規模を増やして事業と呼べる状態にする3年超途中で規模が落ちると振り出しに戻る
使用貸借を有償貸借に変える契約と賃料授受の開始後相当の対価と認められる賃料が必要
分割の方針を決めておく相続発生後の申告期限まで未分割だと使えない

表の見方:黄色の行だけが3年超の期間を要します。他の対策は着手から比較的短期間で要件を満たせますが、新たに貸付を始めた扱いになると3年縛りがかかります。

つまり舗装しても、それが新たな貸付の開始とみなされれば3年を超えるまで例外は使えません。すでに貸していた土地の設備を整えるのか、貸していなかった土地を貸し始めるのかで扱いが変わります。

相続がいつ起きるかは選べません。だからこそ、3年という期間を確保できるうちに着手しておくことが実務上の要点になります。

貸付事業用宅地等の相談は相続税の対応実績がある税理士へ|一括相談・見積り

貸付事業用宅地等の特例は、要件の判定・有利判定・3年縛りの例外・駐車場の構築物要件など、判断が分かれる論点が集まっています。

適用を漏らすと数百万円の節税機会を失い、誤って適用すると税務調査で否認されます。どちらの側にも大きな金額が動きます。

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

要件を満たすかどうかの判定と、どの土地に使うと得かの計算は別の作業です。両方を扱った経験がないと最適な組み合わせを出せません。

【実績のある税理士に依頼する理由】

  • 複数の土地がある場合に、節税額が最大になる組み合わせを計算できる
  • 駐車場の舗装状況から、構築物の敷地として認められるかを判断できる
  • 3年以内に貸付を始めた土地について、例外が使える規模かを判定できる
  • 途中で規模が落ちた期間がないかを、契約書と申告書から確認できる
  • 第11・11の2表付表1の記載を漏らさず、特例を確実に反映できる
  • 未分割の場合の見込書と、後からの更正の請求まで段取りできる

具体例を挙げます。自宅とアパートの敷地を両方持っている場合、どちらに特例を使うかで節税額が数百万円変わることがあります。面積と評価額の組み合わせで結論が逆になるため、計算しないと分かりません。

見積りを比べると分かる3つの判定ポイント

複数の事務所から見積りを取ると、金額以外の差が見えます。次の3点で比べてください。

判定ポイント1:有利判定を計算して見せるか。「特例が使えます」で終わる事務所と、どの土地に何㎡使うといくら下がるかを出す事務所では精度が違います。→ 後者の方が同じ判断を何度も扱っていると判定できます。

判定ポイント2:3年縛りの例外について規模の確認を求めてくるか。物件数・室数・駐車場の台数を聞かない事務所は、例外の判定をしていません。→ 最初に規模を確認する事務所の方が実務を分かっています。

判定ポイント3:駐車場の現況確認をするか。舗装の有無は写真や固定資産税の課税明細で確認できます。→ 現況を見ずに結論を出す事務所は、否認のリスクを抱えたままです。

相談しないまま進めるリスク

自分で進めた結果、特例を取りこぼすケースには共通した原因があります。

【相談しないまま進めた場合に起きること】

  • 有利判定をせずに面積を割り振り、節税額が数十万〜数百万円減る
  • 付表1への記載を忘れ、要件を満たしていたのに特例が適用されない
  • 3年以内に貸付を始めた土地に適用し、税務調査で否認される
  • 構築物のない青空駐車場に適用し、追徴税額と加算税を負う
  • 未分割で見込書を出さず、後から特例を使う権利を失う
  • 規模が落ちた期間を見落とし、例外が使えない土地に適用してしまう

重要ポイント:この6つのうち付表1の記載漏れと見込書の未提出は、申告期限を過ぎると取り戻せません

依頼した場合と自分で申告した場合の比較

項目税理士に依頼自分で申告
有利判定計算して最大化できる割り振りを誤ると節税額が減る
3年縛りの判定規模と期間を確認して判定誤適用で否認される恐れ
駐車場の構築物現況と課税明細で確認自己判断のまま申告
付表1の記載漏れなく反映記載漏れで適用されない例がある
総合報酬を上回る効果が期待できる取りこぼしと否認で高くつくことがある

表の見方:金額の大きさは土地の評価額で変わりますが、200㎡・50%の減額は評価額が大きいほど効きます。評価額が高い土地を持っている場合ほど、判定の精度が結果を左右します。

一括相談・見積りの手順|STEP1〜STEP4

STEP1
相続の概要を整理する
土地の所在地と面積、貸付を始めた時期、物件数・室数・駐車場の台数、相続人の構成を整理します。貸付の開始時期は3年縛りの判定に直結するので必ず確認します

STEP2
一括見積り・相談サービスに依頼する
相続税申告・相続税の節税・確定申告・準確定申告など希望する内容を明記し、3社から5社に同時に打診します。所有している不動産の所在地と広さも記載します。財産の種類や相続人の人数は可能な限り正確に伝えると見積りの精度が上がります。フォームの記入は5分程度です。

STEP3
見積りと初回相談を受ける
各事務所から提案内容、試算した相続税額、報酬額が記載された見積りが届きます。気になる事務所と初回相談を実施し、有利判定の考え方と3年縛りの扱いを確認します。

STEP4
税理士を選定・正式依頼する
提案内容の質、説明の丁寧さ、報酬の納得性で選定します。相続開始から7か月以内に決めるのが目安です。評価に時間がかかる土地があるほど、早く決める必要があります。

よくある質問(FAQ)

Q. 青空駐車場は相続前に砂利を敷けば特例が使えますか?

砂利敷きを行えば「構築物あり」として特例の対象になる可能性があります。ただし2018年の改正により、相続開始前3年以内に新たに貸付事業を開始した場合は「3年縛り」の対象になります。

砂利を敷いて月極駐車場を始めてから3年以内に相続が発生した場合は、事業的規模の例外に該当しない限り特例を適用できません。生前対策は早めに実施してください。

Q. 相続したアパートの一部に空室がある場合、空室部分の敷地も特例が使えますか?

空室が「一時的な空室」と認められる場合は、空室部分の敷地も含めて特例を適用できます。退去後すぐに募集を行っていて、空室期間が概ね1〜2か月程度であれば一時的な空室として扱われる可能性が高いです。

ただし長期間の空室や、募集活動がない場合は認められないこともあります。

Q. 特定居住用宅地等(自宅)と貸付事業用宅地等(アパート)は両方同時に使えますか?

両方を同時に使うことはできますが、貸付事業用の200㎡は特定居住用との按分計算で制約されます。特定居住用に全面積(330㎡)を使うと、貸付事業用に使える面積はゼロになります。

有利判定の計算を行い、節税額が最大になる組み合わせを選んでください。

Q. 相続開始前3年以内に購入したアパートでも特例が使えますか?

2018年の改正により、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地は原則として特例の対象外です。ただし相続開始前3年以上、事業的規模(5棟10室等)で貸付事業を行っていた場合は例外として適用できます。

既存の物件数・室数を確認し、事業的規模を満たしているかを確かめてください。

Q. コインパーキングとして貸し付けている土地は特例が使えますか?

コインパーキングの土地も、精算機やフラップ板、舗装などの構築物があれば特例の対象になります。ただし構築物が誰の所有かによって扱いが変わることがあります。

業者が設備を設置して一括借上げしている場合は、その設備が「構築物」として認められるかを確認してください。

まとめ|貸付事業用宅地等の特例で後悔しないための3つのポイント

特例の基本と要件

  • 200㎡・50%減額で、特定居住用(330㎡・80%)や特定事業用(400㎡・80%)より節税効果が低いため有利判定が重要
  • 「建物または構築物の敷地」「相当の対価での貸付」「申告期限まで継続」の3要件をすべて満たす必要がある
  • 青空駐車場(構築物なし)は対象外・砂利敷き・アスファルト舗装があれば構築物ありとして特例可

2018年改正と3年縛りへの対応

  • 相続開始前3年以内に新たに取得・貸付開始した土地は原則対象外(3年縛り)
  • 事業的規模(5棟10室等)を満たしていれば3年以内取得でも特例適用可能
  • 生前対策(砂利舗装・事業的規模の確保・使用貸借の有償化)は早めに実施することが重要

有利判定と申告手続き

  • 複数の土地がある場合は有利判定の計算を行い、節税額が最大になる組み合わせを選択する
  • 申告期限(10か月)内の遺産分割・申告が特例適用の絶対条件
  • 未分割の場合は「分割見込書」を申告期限内に提出し後から更正の請求で特例を適用する

今すぐ取るべき行動

  • 相続が発生した場合は、アパート・駐車場等の貸付用不動産の要件(構築物・賃料・3年縛り)を確認し、すぐに相続税の対応実績がある税理士に相談する
  • 相続がまだ発生していない場合は、青空駐車場の舗装・使用貸借の有償化・事業的規模の確保等の生前対策を税理士と相談して早期に実施する

※本記事は2026年8月時点の法令・税率に基づいて作成しています。税制は改正されることがありますので、申告前には必ず税理士または税務署へご確認ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談に代わるものではありません。

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